Atari Lynx(アタリ リンクス)発売35周年。世界初のカラー液晶を搭載した携帯型ゲーム機は海外生まれ。拡大・縮小・回転機能も備えた性能の高さが売りだった【今日は何の日?】
上下を逆さにできるユニバーサルデザイン 1989年(平成元年)11月20日は、Atari Lynx(アタリ リンクス)が発売された日。本日で発売から35周年を迎えたことになる。 【記事の画像(4枚)を見る】 Atari Lynx(以下、リンクス)は、海外メーカーであるアタリの家庭用ゲームやパソコン部門を担う会社アタリコープから発売された携帯型ゲーム機。同年発売のゲームボーイが築いた牙城を突き崩すことは叶わず、日本では知る人ぞ知るゲームハードに留まってしまったが、世界初のカラー液晶を採用した16ビットの高性能マシンとしてゲーム史にはその名前を刻んでいる。 アタリと言えば、今年(2024年)8月に新ハードとして“Atari 7800+”を発表してオールドゲーマーたちの度肝を抜いたニュースが記憶に新しい。アタリコープが1980年代に発売した据え置き型ゲーム機Atari 7800の互換機が、昨年の“Atari 2600+”に続いて登場するのだから、人生何が起こるかわからない。 まるでスケートボードのようなリンクスの横長のボディーは正面から見ると、Nintendo Switchより少し大きいくらいのサイズ感。この2機種で比較するとインパクトは薄まる感じがするが、当時の携帯ゲーム機としてかなりの大きさだったことは間違いない。本体にはしっかりと厚みがありアルカリ単三電池を6本も使用するため、重量もなかなかだ。 正方形に近い形状のカートリッジを本体左側から挿入するのだが、本体とは反対にめちゃくちゃ薄く、伝わるかわからないがカレ・ド・ショコラくらいしかなかった記憶がある。聞くところに寄るとカートリッジがやたらと外しにくかったらしく、形状が変化して最終的には上部が少しカーブして指を引っ掛けやすく進化していったとか。 ユニークだったのはA、Bボタンが本体上下にふたつずつ付いている点。なんとリンクスは上下を逆さにして持つことが可能で、左利きのプレイヤーでも何ら違和感を覚えることなくプレイできた。誰もがプレイしやすいようなデザインを採用するとはなかなかに先進的だったのではないかな。なお、個人の感想になるのだが……リンクスには本体を縦にしてプレイするゲームもあるが、それはちょっと持ちにくかった。 中央にある液晶画面は巨大なボディーに対して小ぢんまりして見えるが、実際は3.4インチほどとライバル機より大きかった。そして、世界初は伊達ではなく、カラーの液晶画面が鮮烈過ぎた。バックライトもあったため、鮮やかな16色の同時発色の画面に多くのゲームファンたちが惹きつけられたんじゃないだろうか。ちなみに、国産ゲーム機初のカラー液晶を搭載したゲームギアの登場は1990年10月6日と約1年先となっている。 冒頭でリンクスは高性能マシンと書いたが、それは携帯型ゲーム機でありながら本体に拡大・縮小・回転機能を備えていたからだ。同機能はスーパーファミコンのセールスポイントとしてあまりにも有名だが、約1年ほど早くリンクスが採用していたことはあまり知られていない気がする。通信ケーブルをつなげば8人までの同時プレイも可能だった。 1989年に発売された『カリフォルニアゲームズ』。画面は、収録されたゲームのひとつ「サーフィン」。 1991年7月には、遊びやすく改良を加えた“リンクスII”も発売。しかし、1994年12月8日に発売された据え置き型ゲーム機の“Atari Jaguar(アタリ ジャガー)”の普及に注力するため、リンクスの生産は終了することになったのだった。