「根性論バリバリの上司」から無理なノルマを押しつけられたときの「たったひとつの対策」
根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。 【写真】知ったら全員驚愕…職場をダメにする人の「ヤバい実態」
ターゲットにされないために
わが身を守るためには、できるだけ職場を腐らせる人のターゲットにならないように気をつけなければならない。そのためには、ターゲットにされやすい人とは正反対のタイプになるしかない。 とはいえ、現実的には難しい面もある。弱くておとなしい人に「強くなれ」「自己主張しろ」と口を酸っぱくして言っても、すぐに変われるわけではない。本人がいくら努力しても、元々の性格を変えるのは難しいからだ。また、自己肯定感が低く、自信がない人に「自信をつけろ」と助言しても、すぐに自信がつくわけではない。日々、本人が努力を積み重ね、それが実って周囲から認められれば、ある程度は自信がつくかもしれないが、それまでには相当な時間がかかるに違いない。
断る練習──「部分交渉」から始めよう
それに対して、断る練習をしたり、断る技術を身につけたりすることは、今すぐにでも始められる。 もっとも、そのためには、断ることによって生じる波風への恐れを克服しなければならない。断れない人には、この波風を恐れるがゆえに戦うことから逃げているようなところがある。そういう人に「波風を恐れず、戦いなさい」と助言しても、すぐに実践できるわけではないだろう。そこでお勧めするのが「ちょっとだけ戦う」手である。戦うという言葉が強すぎるようなら、「ちょっとだけ交渉する」、つまり「部分交渉」といってもいい。 たとえば、上司から厄介な仕事を体よく押しつけられそうな場合。これまでは「○○さん、この仕事お願いね」と言われると、「はい」とそのまま引き受けるしかなく、せいぜい陰で「この忙しいときに、こんな仕事までできないよ」と愚痴をこぼすくらいしかできなかった方が多そうだ。 そこをちょっと変えることが断る練習の第一歩になる。これからは「今ちょっと忙しいので、明日まで待ってもらえますか」と時間的な交渉を一つ加えるのだ。もしくは、「今、別の案件を抱えていて、全部はできないので、この部分だけでもいいですか」「□□さんがここをやってくれるなら、残りはやります」といった条件を提示して、ちょっとだけ交渉する手もある。 あるいは、上司から過大なノルマを押しつけられそうな場合も、「そこまでの数字は無理ですが、ここまでならやれるかもしれません」「一人では無理ですが、誰か手伝ってくれるのならやってみます」といった言い方で「部分交渉」する。 すべてを断るわけではなく、交渉して一部を断る練習を積み重ねていけば、交渉力が身につくはずだ。そうなれば、さまざまな場面で応用できて、少しずつ自分の主張を伝えながら、上手に言い返せるようになるだろう。 すると、向こうも、それまでは「こいつは自分の言いなりになる」と思い、何でもかんでも押しつけようと画策していたとしても、その印象を改めざるを得なくなる。そうなれば、しめたものだ。確実に実害を減らせるのだから。 要は、職場を腐らせる人に対しては、こちらがちょっと面倒くさい奴になることだ。面倒くさい奴と思わせることに成功すれば、職場を腐らせる人はあなたを敬遠するだろうから、"虫除け"として役に立つ。一度試してみる価値はあるはずだ。 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
片田 珠美(精神科医)