日本人母子襲撃事件 “1日遅れの発表”の背景に「社会不安の高まり露呈させることへの危惧」 “最も安全な国”中国の報道体制
日本企業の投資への悪影響を懸念か
また城山教授は、公表が遅れた背景には、日本企業の投資に悪影響を及ぼすことを懸念した可能性もあったとみている。 「事件を起こした男は52歳の無職だったということですが、現在、経済不況や社会の不平等感が拡大する中、絶望感が高まり、社会に報復したいと考える不満分子は以前に比べて確実に増えています。今回、事件についての公表が遅れた背景には蘇州市は日本企業の誘致を積極的に進めており、事件を公表することで日本企業の投資に悪影響を及ぼすことを懸念して公表を控えようとした可能性もあったと思います。 習近平体制が西側敵視の宣伝を強化する中、排外的な感情が高まり、外国人への攻撃を正当化する社会的弱者が増えているという現実もあり、今回の胡友平さんの悲劇は、歪んだ体制によってもたらされたものとも言えます」 今回の事件は中国に住んでいる日本人に大きな衝撃を与えた。北京市で小学生の子供をスクールバスに乗せている母親は「日本人を狙ったのか、そうでないのか、事件の背景が分からないことが一番怖い。今の送迎体制では同じような事件が起きた場合、身代わりになって刺されるしか子供を守る方法がない」とその不安を口にした。 「迅速で正確な報道」は誰のために必要なのか。それは国家や権力者のためではなく、日常を生きる市井の人々が安心して暮らせるためのものであるはずだ。私は今回の事件を通して「公開と取材の自由」が何より重要だと強く感じている。 (取材、執筆:FNN北京支局 河村忠徳)
河村忠徳