不振の浅田真央 来季の平昌五輪出場は困難なのか?
今シーズンの浅田は、ショート、フリーの両方にバレエ組曲「恋は魔術師」の「火祭りの踊り」という同じ曲を用いる大胆なチャレンジを行っている。ショートはピアノバージョンで衣装も黒。しっとりとした大人の真央を表現、フリーはオーケストラバージョンで赤い衣装に変え、情熱的で壮大な世界を表現するなど、その演技力は円熟味を増している。 だが、前述の中庭氏の説明によると浅田の武器である演技力で勝負するのにも限界があるという。 「女子の場合、男子と違い、技術点のミスをファイブコンポーネンツ(演技構成点)でカバーしにくい採点方式になっています。ジャンプを失敗すると、プログラム全体の完成度も下がり、演技構成点の評価にも影響を与えることになります。ジャンプを確実に成功させなければ、浅田選手のせっかくの世界トップ級の表現力も採点に生かせないのです」 またジュニア世代の台頭だけでなく、中堅クラスのレベルが上がっていることも、不振の浅田選手との“差”をさらに広げている。 「これまで、表彰台に縁遠かった中堅選手のレベルが上がり、日本ではジュニア世代が出てきました。日本のジュニア世代の特徴は、ジャンプの安定感。彼女たちのジャンプの精度は非常に高いのです」と中庭氏。 スケートカナダで2位に入ったケイトリン・オズモンドなどが中堅選手のレベルアップの象徴。ジュニア世代では、今週末のGPシリーズ中国杯の出場する三原舞依(17、神戸ポートアイランドFSC)は、浅田が惨敗したスケートアメリカでGPデビュー戦ながら3位に入った。また樋口新葉(15、日本橋女学館高)も、フランス杯で3位に入ってのシニアデビュー。高いレベルでデビューしたジュニア世代の突き上げも激しい。 では、浅田は、もう限界なのか。 中庭氏は、その説には反対の意見だ。 「浅田選手は『ジャンプにだけ集中したい』とコメントしていますね。その言葉通り、故障が治り練習で追い込めるようになり、ジャンプの精度が上がれば、演技力では、まだまだジュニアからシニアに上がってきた世代は浅田選手にはかなわないのです。全日本まで時間がありますから、どこまで回復できるかがポイントでしょう。自信を失ったというメンタルの部分は不安ですが、体の不安が消えれば解消すると考えます」 しかし、いよいよ来シーズンに控える平昌五輪の代表争いについては不透明だという。 「宮原選手の安定感に加え、ジュニア世代から、三原選手、樋口新葉選手が表彰台デビューを果たしました。そして、来シーズンは、世界ジュニアで優勝した本田真凜選手がシニアデビューしてきます。ジュニア世代にはまだ有力選手が多く、世代交代という言葉が出てきても無理はありません。すべては浅田選手がどうコンディションを作ってこれるかでしょう。繰り返しますが、演技力については、ジュニア世代では浅田選手に歯が立ちません。その意味で世界選手権の出場権をかけた全日本でどこまで立て直してくるのか注目です」 アスリートの引退に、怪我や肉体的な限界はつきものである。だが、それを克服するドラマを生むのもまた、トッププロの底知れぬ力である。フィギュア界の“レジェンド”浅田は、不振の原因となっている自らのコンディションをどう立て直して、強力なジュニア世代とどう戦うのか。いや、本当の戦いは、自らの内側にあるのかもしれない。