「世界で最も美しい帆船」アメリゴ・ヴェスプッチ、わざわざ日本に寄ってくれた「洋上の大使館」に円安を実感
辛酸なめ子のじわじわ時事ワード【世界で最も美しい帆船】
「世界で最も美しい帆船」と呼ばれるイタリア海軍の練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」が、東京に初入港。東京国際クルーズターミナルは、直前まで寄港していたドイツ海軍の艦船と入れ替わりで、船オタクの方々が盛り上がったようです。入港日に見に行くと、評判通りのクラシカルで洗練された船体に目を奪われました。黒と白に木の茶色というシンプルな配色。1931年に完成したとは思えないほど、よく手入れされ優美さを保っています。 【イラスト】大谷翔平選手の妻・真美子さんが持つバッグの抜群の宣伝効果はエルメス「バーキン」並み？ 船首には、船名の由来であるイタリア人探検家の金色の像が設置されています。洋上の大使館とも称され、ただの訓練船ではないセレブ船。入港を記念しイタリア海軍バンドがイタリアと日本の国歌を演奏、気分を盛り上げました。 寄港中、東京国際クルーズターミナルのビル館内でも、イタリアの歴史や文化を体験できるイベントが開催されるというので、高貴な船を体感するため、乗船予約をとって後日再訪問しました。 ターミナルの芝生広場にはバーやショップ、DJブースが設けられ、イタリアの開放的な空気が持ち込まれたようです。 来場者にはサンバイザーやバッジなどが配布され、乗船体験も無料。高貴な船の余裕を感じます。乗船する時、木製の古いタラップを上るのは、アトラクション的なスリルがありました。船内は磨きあげられた高級木材が使われ、設備やインテリアも洗練されていました。 船員は軍人や海軍学校の学生で構成されているそうです。ネイビーと白の軍服が映えるだけでなく、不思議と男女とも見た目が整った方が多く、一緒に写真を撮ったり握手したりする参加者も。笑顔でファンサービスしてくれるフレンドリーな姿を見て、何人かに話しかけてみました。「古い船ですが、幽霊は出ますか？」と聞くと、若い男子学生は「No」と笑顔で返答。たしかに船は明るくきれいで空気はよどんでいないようです。別の男子学生に「船は快適ですか？」と聞くと、「長く乗っているとだんだん快適になりますよ」。今回は2年近くかけて世界中を航海しているそうです。 夢心地なひとときのあと、ショップでお土産の価格を見て現実に戻りました。円安の影響か、ハガキは800円でTシャツは1万5千円、タンクトップも1万4千円、キャップ1万3千円、ポロシャツ2万6千円など、結構なお値段でした。イタリア旅行自体も遠くなった今、わざわざ日本に寄ってくれたありがたさに感じ入りました。
艦長のモチベーション
海軍関連では、ドイツの艦艇のBGMも話題に。ロンドンのテムズ川を通過する時、映画「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーのテーマ曲「帝国のマーチ」を大音量で流す動画が拡散しました。 艦長は「スター・ウォーズ」の大ファンで、ジョン・ウィリアムズの名曲の崇拝者だったと、後日海軍はコメントしました。艦長は音楽を自由に選べて、選曲に特に深い意味はなかったとのこと。イカつい船が「スター・ウォーズ」の曲で航行する姿は、艦長冥利に尽きるでしょう。軍人の出世の隠れたモチベーションになっているかもしれません。（漫画家・コラムニスト、エッセイスト）
