FOMC、追加利上げ、3月実施が濃厚 その後の利上げペースはどうなる?
これまで筆者は5月連邦公開市場委員会(FOMC)における追加利上げをメインシナリオにしてきましたが、ここへ来て状況は一変しました。 3月6日時点で金融先物が織り込む3月FOMCにおける利上げ確率(現在の金利先物の値から逆算して市場参加者の予想を数値化したもの)は96.0%と、もはや利上げは既成事実化した印象です。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
追加利上げ3月実施が濃厚
3月入り後に連邦準備制度理事会(FRB)高官が展開した利上げキャンペーンによって、金融市場の織り込みが一気に進んだ格好です。2月27日からの週に、カプラン・ダラス連銀総裁(タカ派、投票権あり)、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁(中立、投票権なし)、ダドリー・N Y連銀総裁(ややハト派、投票権あり)、ブレイナード理事(強いハト派、投票権あり)、パウエル理事(ややハト派、投票権あり)が揃って3月FOMCでの追加利上げに含みを持たせる主張を展開したかと思えば、それに決定打を打つかのごとく、イエレン議長も3月の利上げに肯定的な発言を示しました。 この怒涛の利上げキャンペーンによって、1週間という短期間で市場参加者のコンセンサスはがらりと変わったというわけです。3月10日発表の雇用統計でよほどのネガティブサプライズがない限り、3月の追加利上げが濃厚な情勢といえるでしょう。
3月に追加利上げが実施された場合、その後はどうなる?
仮に3月FOMCで追加利上げが実施された場合、市場参加者の目線は次回以降の利上げパスに集中することになります。そこで年3回の利上げ計画を前提に今後の利上げパスを予想すると、残り2回の利上げで真っ先に候補にあがるのは、記者会見がセットされている6、9、12月FOMCとなります。 ここでそれぞれの組み合わせを考えた場合、「3・6・9」といういかにも歪なスケジュールを除くと「3・6・12」、「3・9・12」が有力な候補となりますが、後2者は6カ月間(※6月から12月、3月から9月)という時間的空白が問題となります。労働市場が完全雇用状態に近づき、インフレ率も概ねターゲットを捉え、金融政策の正常化が正当化される状況下で、FRBが6カ月という時間的空白を長過ぎると考える可能性は大いにあります。 ここで記者会見なしの会合における利上げシナリオを検討してみます。周知のとおり現行8回のFOMC日程では「重要な政策変更は記者会見ありFOMCで」という暗黙の前提があり、実質的に4回しか政策変更のチャンスがありません。これがFRBの手足を縛っていることに疑いの余地はなく、FRBはこの悪しき伝統を断ち切り、政策の自由度を高めたいという意向を持っているはずです。だとすれば、記者会見なしのFOMCで政策変更をする という“前例”を作ることが重要な意味を持つことになります。それを可能にするのは、筆者が従前から指摘しているとおり、記者会見ありのFOMCで「予告」した後、記者会見なしのFOMCで予告どおりそれを実行するという戦略です。 以上を踏まえると、FRBが3月FOMCで利上げを決定した後、6月FOMCは敢えて利上げをスキップし、その代わりに次回会合における利上げを「予告」、7月FOMCに予告どおりに追加利上げ、その後12月FOMCに3発目の利上げというシナリオが浮かび上がります。年3回という回数に拘るのであれば、これが最適に思えます。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
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