お客様に「自分勝手な人だ」とあきれられる人が「良かれと思ってやっている行動」ワースト1
● お客様がとった「予想外の行動」とは 約2分後、戻ってくるとお客様の姿が見えないんです。 椅子に腰かけたところ、壁の鏡越しにお客様の姿が見えました。 なんと、手には財布を持っているではありませんか。 「お客様に払わせるわけにはいかない!」 僕は瞬間的に席を立ちあがり、お客様のもとに駆け寄って「〇〇様、ここは私が!」と申し出ました。 ですがお客様も「お時間をいただいたのは私のほうですから」と譲りません。 「いえいえ、どうかここは僕に!」 結局、押し切るような形で支払いをすませました。 ● 帰路で抱いた「ある違和感」 別れ際も、そのお客様は「〇〇先輩には今もお世話になっているので、どうかよろしくお伝えください」と、律儀にお伝えくださいました。 僕は感激しながら帰路についたのですが、なんだか心地が悪いんです。 だって先ほどのお会計をした場面、お客様の顔が「笑顔」じゃなかったんです。 その表情を思い出し、僕は「やってしまった……」と後悔しました。 その人は、しきりに「〇〇先輩にはお世話になっている」と言っていました。 僕のことをただの営業ではなく、「〇〇先輩から紹介された人」として大切に扱ってくれていたのだと思います。 おそらく本心から、自分で支払いたかったのでしょう。 それなのに僕は「営業が払うもの」というマナーにとらわれ、お客様の顔を見事に潰してしまいました。 ● マナーを守る前に「5秒」立ち止まる マナーをかたくなに守ることは、エゴでしかありません。 ここまで何度も繰り返していますが、マナーは相手に心地よく過ごしていただくための手段であって、「実行する」ことが目的ではありません。 だから本来は、相手やシチュエーションによって変えなければいけないのです。 「即行動」は大切ですが、動く前に立ち止まって「本当にそれでいいのか?」「相手はどう思うだろう?」と、視点を変えて考える意識が必要です。 とはいえ、じっくり考えていては後手後手になるだけ。 そこで、「5秒間だけ立ち止まって考える」ことを意識するんです。 5秒間で良し悪しの判別なんてできないかもしれませんが、少しでも意識をすることで、マナーに縛られて相手の気持ちを無下にするのを防げます。 (本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。) 福島 靖(ふくしま・やすし) 「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、「俳優になる」ことを口実に18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。同社が大切にするホスピタリティを体現し、6年間で約6000人のお客様に名前を尋ねられるほどの「記憶に残る接客術」を身につける。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、リッツ・カールトン時代に大切にしていた「記憶に残る」という在り方を実践したことで、1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSky(プライベート・ジェット機の販売・運航業)に入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。本書が初の著書となる。
福島 靖