日銀総裁記者会見:円安阻止のための早期利上げ観測は後退
円安進行リスクは1日で高まったか
筆者は、為替介入と追加利上げで政府と日本銀行が強く連携することで、円安阻止に相応の力を発揮できると前日まで考えていた。その結果、1ドル160円近辺で円安には何とか歯止めがかかる、と想定していた。 しかし、米国時間の25日に米国のイエレン財務長官が日本の為替介入をけん制し、それが政府の為替介入を一定程度制約する可能性が出てきたこと、26日に日本銀行が円安を受けて早期に追加利上げを行うことに慎重な姿勢を見せたことで、それ以前よりも円安リスクは高まり、1ドル160円を超えて円安が進むリスクは無視できなくなった。わずか1日の間に、円安進行のリスクは大きく高まったのである。
追加利上げは9月か
日本銀行は、円安がもたらす経済への悪影響を認識しているだろう。その結果、円安抑止の効果も狙って、円安が進むなかで追加利上げの時期を早める可能性はある。しかしながら、金融政策は為替をターゲットにしない、為替政策を担っているのは日本銀行ではなく政府である、との建前は維持する必要がある。そのため、追加利上げを決める前には、月次の賃金に春闘の影響がどの程度表れるか、賃金上昇がサービス価格にどの程度影響を与えるか、を見極めたうえでなければ、追加利上げに動けないのではないか。この点を踏まえると、追加利上げの時期は今年9月になる、と現時点では見ておきたい。 それまでに、政府が為替介入を通じてどの程度円安を食い止める時間稼ぎができるかが注目されるが、現時点ではあまり楽観的な期待は持てない。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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