宇治山田商、想定外の4人不在 ワンチームで勝利つかむ センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(21日、甲子園) ◇○宇治山田商(三重)5―4東海大福岡● 【写真】背負われてベンチに戻る宇治山田商の選手 インフルエンザ感染に頭部死球、負傷交代……。試合当日に4人も想定外の事態に見舞われた宇治山田商だったが、控え選手たちも一体となった「ワンチーム」で16年ぶりの勝利をつかんだ。 同点の六回無死一塁。試合開始直前に体調不良者に代わってスターティングメンバーに名を連ねた背番号「17」の中瀬琥斗紀(ことき)が、送りバントを決めた。さらに安打で1死一、三塁とし、9番・加藤一路が直球を鋭くはじき返し、勝ち越しの左前適時打を放った。 加藤は「今まで聞いたことのないような声援だった」。相次いだトラブルにも負けずに戦う選手たちに、アルプス席の応援も一体感を増していた。 この日の朝、宇治山田商は選手1人がインフルエンザ感染で登録選手を変更した。試合が始まっても不測の事態は止まらず、三回に3番・中川春輝が頭部に死球を受けて交代し、六回は左翼手の郷壱成が守備の際のけがでベンチに下がった。 だが、主将の伊藤大惺が「このチームはずば抜けた選手がおらず、全員でレベルアップしてきた。誰が出てもチームのためにというスタイルは変わらない」と語る通り、選手たちに動揺はなかった。急きょ先発した中瀬は「常に準備はしていたので、やってやるぞという気持ちだった」と2安打を放った。 前回出場した2008年以来のセンバツ白星。村田治樹監督は八回が始まる時、選手を集めて「これは試されていると思うから、やってきたことを出そう(と伝えた)」と試合後に明かし、目を赤くした。 試合終了直前に病院から戻ってチームに再合流した中川は「(頭部死球で途中交代して)みんなには申し訳なかったけど、勝って本当にうれしい。アルプス席に礼をする時、『また甲子園でプレーできるんだ』と思うと、うれしくて涙が出てしまった」。苦難を乗り越えたチームが、甲子園でもう一回り成長した。【黒澤敬太郎】