両腕で歩くミャンマーの牧師と合気道開祖の「最後の内弟子」 Vol.15
本間との出会い
しばらくすると、「いやぁ、皆さんお忙しいところ、ご苦労様です。お口に合うかどうか分かりませんが、いつもながらの田舎料理を用意させて頂きました。ゆっくり召し上がって下さい」 配膳用の丸いお盆を持った中年のおじさんが、愛想よく挨拶した。腰には使い古した酒屋の前掛けをしている。その風体は「居酒屋のオヤジ」にしか見えない。 だが、「本間先生、今日はお世話になります」と、幹事役の空手の師範がそのおじさんに向かって言ったのだ。「先生?」、山本は挨拶の言葉を忘れるほど驚いた。 同じ師範格でありながら、他の師範の方々に礼を尽くして、配膳に気を配りながら、師範会の会話に加わってくる。その話しぶりは東北訛りで気取りがない。言われなければ完璧な「居酒屋のオヤジ」なのである。 その居酒屋のオヤジさんがこんな事を言った。「先週バングラデシュへ行ったんですがね、いやぁ、貧しい子供たちが沢山いて、大変なところですよ、いつ行ってもあそこは」。 「本間先生は世界各国の貧しい子供達のために、ボランティア活動をしているんですよ」 怪訝な顔をしていた(のであろう)山本に対して、傍にいた柔道師範がそう説明した。「本間先生は、今回はどちらの国を回って来られたのですか?」と剣道師範が尋ねた。 「最初にモンゴルに入って、それからフィリッピンのミンダナオ、その後はネパールのカトマンズ……」 その居酒屋のオヤジ、いや本間はネパールの後バングラディッシュ、インドと回り、約1カ月の旅程をこなして帰って来たという。
Project Logic+山本春樹