「“はたらく”と好き勝手に生きられるよ」ヨシタケシンスケさんインタビュー【後編】
子どもに聞かれても、うまく答えられない! 自分もよくわかってない!? ヨシタケシンスケさんと考える「はたらく」ってなんでしょう?
なぜ私たちは、働かないといけないの? お金のため? それとも夢のため? 実はあまりわかっていない、“はたらく”意味。ヨシタケさんは、どう答えてくれるでしょう。 ●ヨシタケシンスケ 1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。独自の視点で描かれる、絵本、装画、イラストエッセイなどが大人気。高校2年生、小学校6年生の息子の父として、時々は悩むこともある。
向いている仕事なんて、考えたってわからない
「「好き」も大切だけれど、「きらいなもの」も、これでなかなか役に立つ」──ヨシタケシンスケさん 前編の記事でもお話を伺いましたが、私たちが子どもと“おしごと”について話すとき、どうしてもあれこれと言わずにはいられません。自分がやりたいと望む仕事に就いてほしい。楽しいと思える仕事に就いてほしい。「好き」を仕事にしてくれたなら、最高! だから、あれこれ口を出してしまうのです。「ねえ、まずは好きなことを見つけてみたら?」。それは、まさに親心でもあり……。 「でも大人が求める“好きになってほしいもの”の幅って狭いじゃないですか。あわよくば、高尚なものを好きにさせようとするでしょ? 自分は子どもの頃、そんなものを好きだったかっていうと、決してそうじゃないのに。なんですかねえ、親となった途端に生まれる、その考えのあさましさ(笑)! まあ、親としての僕も含めての話ですけどね。基本、親がやっていることなんて、自分を棚に上げることだけなんですけれど。だいたい、趣味なんて役に立たないから趣味なのであって、それを何かに役立ててやろうなんて、なかなか貧乏くさい発想ってやつかもしれないですよね」 ひとつのことに夢中になって、ブレずにどんどん突き進んでいって、それを仕事にまでするなんて、もはやおとぎ話なのかも。 「好きなものなんて、特に子どもの頃はころころ変わるのが当たり前だし、友達がいいと言ったものをまねしたり、流行りにものったりしていく中で、自分の中でちょっとずつたまっていくものだと思うんですね。ましてや向いているものなんて、頭で考えたってわからない。体で感じるしかないことなんです。だから、『これやるくらいならこっちだな』っていう、明らかに向いていないことを経験してみないことには……子ども自身が、木から落ちてみないことにはわからない。そういう痛みを知ることはやっぱり、必要なんじゃないかと思いますね。 ちょっと話は変わりますけど、すごくきらいな人を作っておくっていうのもありなんですよ。『あいつみたいにならなくてよかったなあ』とか『あいつみたいなことするくらいなら、俺はこっちを頑張るぞ』とか。好きなものって、流行り廃りもあるし、けっこうころころ変わるじゃないですか。でも、きらいなものってあんまり変わらないんですよね。“きらい”は意外に長くその人を律してくれるんです」