健康食品の「機能性表示」解禁へ――トクホ並みに?
6月5日に安倍首相が発表した成長戦略の中に、サプリメントなどの健康食品や農産物などで健康への効能・効果を表示することを認める方針が盛り込まれました。食品は医薬品とは異なることから、これまで効果を示してもいいのは特定保健用食品(通称・トクホ)や栄養機能食品に限られていましたが、来年度中には現行の規制が大きく緩和される見通しです。
疲労回復などの生理機能
現在、トクホや栄養機能食品は、健康増進法に規定された保健機能食品として「食品の機能性表示」が認められています。機能性表示とは、食品のもつ栄養機能(生命維持に必要な栄養を与える)、嗜好性(五感を介して美味しさを与える)、生理機能(疲労回復などを促し病気を予防する)の3つの機能のうち、特に3番目の生理機能について、その食品がどのような働きをするのかを、商品に表示したり、広告でアピールしたりすることです。 たとえば、お茶に含まれるカテキンは体脂肪を燃焼しやすくする効能のあることが知られていますが、これを一定の割合以上含んでいるペットボトルのお茶でトクホを取得すれば、体脂肪が気になる人に勧めて良いということになります。 科学的根拠がなければ機能性表示はできません。その基準を定めたり、商品ごとに個別に審査し許可するのが消費者庁です。栄養機能食品はミネラルやビタミンを補うもので、成分量が国の基準に合っていれば許可なく表示できる規格基準型です。トクホについては、1991年に導入された当初はすべて個別許可型でしたが、2005年に規格基準型が創設され、おなかの調子を整える成分として大豆オリゴ糖などの一日摂取目安量が設定されました。 こうした規制が行われてきたのは、食品の安全性を確保し、医薬品との区別を明確にして、消費者を保護するためです。ただ、現行制度のもとでは、トクホ申請のための実験データ等を準備する費用と時間がかかる上、申請から許可まで最長で2年かかるため、食品メーカーとしては活用しにくいという現状がありました。
消費者の混乱を心配する声も
規制緩和の主な目的は、企業等の責任で科学的根拠を示し機能性を表示できるようにすることで、個別許可型の手続きにかかる時間やコストを省き、制度の活用を促すことにあるとされています。この規制が緩和されれば、企業は食品の付加価値を訴求しやすくなり、超高齢社会を背景に市場はさらに拡大すると考えられます。 一方で、有効性を企業が客観的に評価する方法や、品質の管理方法、健康被害情報の収集など安全性を確保するための具体策は、まだ定まっていません。そのため規制緩和のやり方によっては不確かな情報が消費者の混乱を招くことを危惧する専門家もいます。