【コラム】マイナス金利終焉、日本も世界も感謝すべきだ-オーサーズ
(ブルームバーグ): 日本銀行がマイナス金利政策を解除し、無担保コール翌日物金利を0-0.1%程度に誘導する事実上のゼロ金利政策に移行することを決定したことにより、マイナス金利を維持する中央銀行はなくなった。17年ぶりの利上げを受け、短期資金を借りる方に利益が生じる奇妙な世界は終わりを迎えた。20年余り前のゼロ金利政策導入は、疑念と反感をもって迎えられたが、日本はマイナス金利政策からようやく脱却した。
マイナス金利政策の解除に加え、日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)と、株式市場への直接介入に踏み込んだ歴史的冒険ともいえる上場投資信託(ETF)の新規購入も終了する。日本国債市場への介入は完全にやめたわけではない。
歴史の流れを見れば、これは一大事であり、しかも数日前に多くの人が予見していたより早く起きた。日本は「量的緩和(QE)」という言葉を世界に与えた。利回り押し下げを目的とする債券買い入れの婉曲表現だが、2008年の世界的な金融危機後、全ての主要中銀が採用することになる。「日本化」とは、デフレ不況に陥ることを意味するようになった。日銀の金融テンプレートが世界経済に害を及ぼしたと多くの人が考えている。
しかしこれからは10年国債の買い入れや、翌日物金利がマイナスになるような状況を再び想像できなくなるかもしれない。日本にとっては、長かったディープフリーズ(極度の低温状態)が終わったという感覚が強まるはずだ。日経平均株価は1989年につけた高値を上回った。今年の春闘で経営側が回答した賃上げ率(第1回集計結果)は、91年以来の高水準だ。ほぼ2世代前の壮大な資産価格バブル崩壊で落ちた穴から日本は抜け出した。
さて短期的にそれは何を意味するのか。「大してない」というのが答えのようだ。(オピニオンの同僚、ダニエル・モス氏とリーディー・ガロウドのコラムはこちら)確かに日銀は市場を驚かせる長年の慣行をやめ、欧米の中銀よりはるかに明確に何が起きるか予告した。おかげで直後の市場の反応は抑制されたものとなった。1%を超える自由を得た10年国債利回りが実際に低下したのは驚くべきことだ。円相場もそうだ。日本経済新聞が今回の政策転換を予見する記事を掲載したことでそうなった。