園遊会で皇后雅子さまのお着物に注目 袖には天皇家の「菊紋」と格調高い鳳凰の帯、愛子さまが幼い時期は「貝遊び」の柄行も
■愛子さまを思わせる「貝合わせ」の「貝桶」 翌95年の秋の園遊会では、雲の形を表現した吉祥柄の「雲取り」柄にたくさんの菊や秋草があしらわれた、秋にふさわしい訪問着。裾にあしらわれた濃い緑色と朱色の雲の対比が若々しい。 2003年の秋の園遊会では、ショートヘアの雅子さまが、凜とした雰囲気で訪問着を着こなしている。 「髪は長くても短くても、どちらでも素敵です。髪やおくれ毛が着物の衿にかからないよう、衿あしはすっきりとまとめるのが美しい着こなしです」(泰三さん) 雅子さまの着物には、王朝遊びのひとつ「貝合わせ」の貝をしまう六角形の「貝桶」が華やかに描かれている。貝桶からは、色彩豊かな貝がのぞいている。 幼い愛子さまと遊ぶ、母としての雅子さまを想わせるような優しい柄行。帯に織り上げられた鳳凰の意匠が、格調高く全体を引き締めている。 平成最後となった18年の秋の園遊会では、淡黄(たんこう)色の布地に緑から紅く色づく写実的な紅葉が斜め取りに配された訪問着をお召し。 紅葉には金の箔が上品に入り、帯には吉祥柄である菱型の意匠が織り込まれている。
■十六葉八重表菊、三つ紋のお着物 そして、令和になって初めての園遊会となった23年春。 皇后となった雅子さまがお召しだったのは、内廷皇族の菊紋である十六葉八重表菊(じゅうろくようやえおもてぎく)の三つ紋の訪問着。淡い水浅葱色に流水文様と初夏の草花である花菖蒲が染め上げられた、美しい装いだ。 「流水文様は、夏草や秋草と組み合わせて風景を構築する意匠。菊とともに一部を金駒繍で仕上げられ、流水文様と品よく調和しています」 と、泰三さんは話す。 雅子さまは、白い帯締めをお選びになることが多い。シンプルだが、着物を美しく引き立てる上品な小物使いだという。 控え目でありながら品のある雅子さまの装いからは、園遊会の主役である招待客への心遣いが伝わってくるようだ。 今秋の園遊会の「主役」として、陸上女子やり投げの北口榛花さん、スケートボード男子ストリートの堀米雄斗さん、柔道の阿部一二三さんといったパリオリンピック、パラリンピックのメダリストたちや、建築家の隈研吾さん、歌手で俳優の杉良太郎さんなど、各界で功績のあった約1900人が招待を受けている。 (AERA dot.編集部・永井貴子)
永井貴子