過激化するトランプ保護貿易…「韓国、中国の空席を先行獲得しなければ」
中国との関税戦争を予告した「トランプノミクス」の帰還で韓国企業のそろばんを弾く指が速くなっている。輸出市場で中国と競い合っている韓国の立場では米国の対中圧迫に伴う反射利益を期待できるが、米国と劣らない規模の最大輸出相手国である中国との関係も考慮しなければならないためだ。 韓国企業はトランプ執権第1期(2017年1月~2021年1月)に対中貿易葛藤が本格化して一部の業種で反射利益をあげた。昨年韓国の対米貿易収支は444億ドル(約6兆9400億円)で、史上最大となる。今年は昨年を上回り再び史上最大規模を更新する展望だ。対米貿易収支黒字幅が大きくなった理由としては米国の対中関税強化、対米投資拡大に伴う連携輸出などが挙げられる。韓国企業の対米投資が拡大して韓国企業の米国内生産施設で韓国に中間材を注文する取引量が増え、輸出規模拡大に影響を及ぼしたという分析だ。 対中関税強化で米国企業が中国産の代わりに韓国製部品や製品を探す需要が増えた影響も大きい。トランプ氏は執権1期の時に4回にわたって中国の関税を25%まで高めた。対中国第301条関税措置だ。米国の対中国輸入品目全般にわたって適用され、年間5500億ドル規模だった。これは当時中国の対米年間輸出額とほぼ同じ規模だった。 米国のバイデン大統領もこのような基調を継続した。対中圧迫程度を高めて従来の関税対象から外れていた核心鉱物・バッテリー・電気自動車(EV)・半導体・太陽光セル・鉄鋼・アルミニウムまで関税対象を拡大した。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)によると、米国輸入市場で中国の占有率は2018年22%から昨年14.1%に減少した。この期間、韓国の米国輸入市場シェアは3%から3.8%に増加した。 通商専門家はトランプ執権第2期がスタートと同時に対中関税から上がるとみている。トランプ氏は候補時期に中国に対する関税を60%に引き上げると公約した。このような場合、半導体をはじめとしてスマートフォンなどのデバイス、自動車、バッテリー、太陽光などの分野で韓国企業が一部反射利益を享受する場合があるとの展望が出ている。関税を避けるには中国製部品や製品ではなく韓国製に目を転じるという期待だ。米国は最近中国の間接輸出を遮断するためにメキシコやベトナム・マレーシアなど東南アジア地域まで関税を高めている。韓国貿易協会通商研究室のチョ・ソンデ室長は「トランプ氏の自国優先主義政策で対中関税だけでなく世界の国々を対象にする「普遍関税」を高める場合がある」とし「米国の製造業強化、先端産業力量の強化、雇用創出などに対する韓国の寄与を積極的に前面に出して政府次元で相互利益を得ることができる均衡的折衝戦略を模索しなければならない」と話した。 来年1月トランプ氏の大統領就任直後から中国の空席をいち早く先行獲得しなければならないという助言もある。例えば過去5年間、米国輸入市場で中国比重が減った間、韓国のシェアは0.8%ポイント(p)増加したがメキシコは2%p、ベトナムは1.8%p増えた。対外経済政策研究院のキム・ジョンドク経済安全保障研究室長は「米国で韓国製のシェアをより高めることができる機会」とし「ただしメキシコ・ベトナムの対米輸出には中国の間接輸出額が含まれていてその比重が急増しているので、韓国もいち早く対応しなければならない」と話した。 米国と共に世界最大消費市場である中国との関係調整が必要だという指摘も出ている。米国の基調に合わせて対中牽制(けんせい)に出て中国市場を失う場合もあるという懸念だ。今年韓国の対中貿易比重(10月末基準)は23%で、米国と欧州(25%)を合わせた水準くらい大きい。米中貿易葛藤が始まった後、中国輸入市場で韓国のシェアは2018年9.5%から6.2%に下落した。西江(ソガン)大学経済学部のホ・ジュンヨン教授は「トランプ氏は多国間主義ではなく二国間交渉を通した合意を試みるはずだが、与えるものは与えて得るものとは得る実益を調整できる戦略を展開しなくてはならない」と助言した。