味のとりこ、クリ園守る 富山で電気工事会社営む男性
2022年に閉業した宮島観光栗園(富山県小矢部市)の経営を引き継ぎ、クリ栽培に励む男性がいる。大のクリ好きで富山市内で電気工事会社を営む黒田勝之さん(52)だ。2度目の収穫期を迎えた今秋、採れたクリを「ミヤクリ」と名付け、販売も始めた。今後はクリを使ったスイーツなどを食べられる施設も整備する予定。黒田さんは「富山の皆さんに驚くようなクリの風味を届けたい」と意気込む。 「ケィ・ディック電工事業部」の代表を務める黒田さんがクリを好きになったきっかけは、約20年前に当時の同僚に薦められて長野県小布施町で食べた栗おこわ定食だった。「今までに食べたことのないような濃い風味がした。フルーツとも穀物とも違う魅力に引かれた」。以来クリのとりこになり、同町や岐阜県恵那市などクリが名産の地域に毎年足を運んでいる。 「いずれはクリを使った事業をやってみたい」と、インターネットでクリの栽培に適した土地を探すようになった。そんな時、宮島観光栗園が閉業すると聞いた。「県内で唯一のクリ園。閉業はもったいない。いてもたってもいられなくなった」。すぐにクリ園を管理する生産組合に連絡し、話し合いを重ねた上で、昨年4月から「宮島栗園」として経営を引き継いだ。
本業の合間を縫い、従業員を含む4人で約5ヘクタールのクリ園を管理する。草刈りや斜面の整備、老木の伐採と苗木の植樹など、同園を世話していた農家に教わりながら、初めてだらけの作業に挑戦する日々だ。昨年秋の収穫では、収量が少なく、病害虫の被害を受け、販売できなかったという。「トライアンドエラーの繰り返し。失敗から学んで少しずつ理想に近づきたい」と笑顔を見せる。今年は一定の収穫が見込め、納得の出来となり、県内の道の駅などで販売を始めた。 将来的には、生産から加工、販売までを一括して担う6次産業化を目指す。クリを使ったスイーツの試作品作りにも励んでいるという。「まだまだ道半ばだが、いずれはクリで地域を盛り上げていきたい」と話した。