伊藤信太郎環境相との再懇談に臨む水俣病被害者ら（奥）＝８日午前８時４０分、熊本県水俣市の市総合もやい直しセンターもやい館

　水俣病被害者らと伊藤信太郎環境相の懇談で、被害を訴える最中にマイクが切られた問題を巡り、被害者側が強く要望していた再懇談が８日、熊本県水俣市で始まった。伊藤氏は、被害者側が２０１６年以降、提出してきた共同要求書に初めて回答。６団体と患者認定の基準や救済制度の課題を共有し、今後も対話を継続すると約束した。１０、１１日、残る２団体と懇談する。 【写真】再懇談に臨む水俣病被害者ら＝８日午後４時１０分ごろ、熊本県水俣市の市総合もやい直しセンターもやい館

　６団体が参加する「水俣病被害者・支援者連絡会」が健康調査の早期実施などを求めて提出した共同要求書に文書で回答した。伊藤氏は、ＭＲＩと脳磁計を用いた健康調査について遅くとも２年以内に実施する方針を示したものの、被害者側は求めている大規模調査に適さないと反発した。患者認定制度の見直しで伊藤氏は「総合的に検討してもらっている」と述べるにとどめ、被害者側からは「実質ゼロ回答」などの指摘もあった。 　懇談冒頭、伊藤氏はマイク遮断に関し「発言に真摯（しんし）に耳を傾ける意識が欠落していたことは大変遺憾。大いに反省している」と改めて謝罪。「十分時間をかけ、丁寧に意見交換させてほしい」とあいさつした。 　被害者側は新たに、問題解決へ向けた実務者協議の早急な開催を要請。伊藤氏は「一度の再懇談で全てが解決するとは思っていない。今後もさまざまな形で対話を続ける」と継続的に協議の場を設ける方針を示した。 　伊藤氏は、患者の生の声に触れ、生活実態を知るために水俣病公式確認のきっかけとなった「１号患者」の田中実子さん（７１）宅や、水俣病患者らの共同作業所を訪問。作業所では患者ら約１０人と語り合った。出水市出身の長井勇さん（６７）は「胎児性の子を産んだ母親が患者認定されないのはおかしい」と母の無念を伝えた。懇談後、長井さんは「直接話せてよかった。一度で終わらず。また対話の時間を設けてほしい」と話した。

　５月、水俣病慰霊式後の被害者団体と伊藤氏の懇談で、制限時間を超えた複数の団体のマイク音が切られ発言が遮断された。１週間後、伊藤氏が水俣市を再び訪れ謝罪した。