AJスタイルズがNOAH初参戦! 方舟の天才・丸藤との邂逅に注目が集まる武道館決戦
WWEスーパースター・AJスタイルズの参戦で、注目が集まるプロレスリング・ノア最大のビッグマッチである日本武道館大会を翌日に控えた7月12日正午、主要カードに出場する選手による記者会見がおこなわれ、来日したばかりのAJが、対戦相手である丸藤正道と向き合った。 【会見写真】プロレスリング・ノア 7.13日本武道館大会 記者会見リポート ◇「誰も想像しなかった未来」が武道館で実現 新日本プロレスでバレットクラブを率い、IWGPヘビー級王者になるなどの実績を築いたあと、2016年から世界最大のプロレス団体・WWEに入団以後は、常にトップクラスの一人として世界中のレスリングファンを魅了してきたAJスタイルズ。2019年6月のWWE日本公演以来、5年ぶりに来日となるAJが、NOAH初参戦。 基本、WWEは他団体にタレントを派遣することがないだけに、日本の団体へ出場することだけでも異例だが、これほどのドリームマッチが実現するのは、本人同士がこのカードにとてつもない価値を見いだしていることが第一にある。 丸藤自身、新日本や海外で活躍するAJは見ていても「リング上で出会うことはないんじゃないかと思っていた」と会見で口にしたように、想像さえしていなかった。そうしたなか、WWEで長きにわたり製作総指揮を執っていた元オーナーのビンス・マクマホンから、娘婿のトリプルHが采配を振るう体制へと変わったことで、少しずつ“鎖国政策”が緩和されてきた。 加えて現在、日本国内ではNOAHを運営するCyberFight系列のABEMAで、「WWE TVショー」が中継されている。そうした関係性から交渉を重ねた結果、日本のファンにも馴染みのあるAJを招くことに成功した。 会見で明かされたことだが、NOAH側が対戦相手候補のリストを送ったところ、AJは「マルフジの名前を見つけた瞬間、対戦したいと思った」という。日本とアメリカで数々の栄光を手にしてきたAJ自身が欲した相手、それが丸藤なのだ。 両者は年齢こそAJが3歳上だが、いずれも1998年デビューとあり、出会うことはなくとも心のどこかに、その存在はずっとあったと考えられる。丸藤は日本、AJはアメリカ、それぞれ現代プロレスのスタイルを確立することで、ファンだけでなく同じプレイヤーにも多大なる影響を与えてきた。 おそらく今回のNOAH参戦にあたり、他のWWEスーパースターたちもこのカードに興味を持っているはず。今でも世界のトップレベルにあるAJだが、ボーイズ(選手仲間)の想像の先をいく内容を丸藤相手に見せたら、さらにグレードが上がるし、WWE内での信用も高まる。 「皆さん、ご存知ないかもしれないですが、私はマルフジの試合を見てきました。ずっとトップで活躍しているのはすごいと思うし、いつか対戦できるチャンスがあればと思い続けてきて、明日、それが現実になることで、自分のキャリアへ大きな厚みと重みが新たに加わると思っています。 NOAHとWWEが絡む意味に関して、明日はイヨ・スカイ(紫雷イオ)も日本のリングへ上がる(武道館と同時刻、マリーゴールド両国国技館で林下歌美と対戦)。この流れにトリプルHの日本に対するスタンスが表れているだろう。WWEはこれから、よりプロレスというものを世界に広めていくつもりでいるのだと思います」 今までは主に新日本のフィールドで日本を味わってきたAJにとって、三沢光晴や小橋建太の系譜にある丸藤と肌を合わせることで得られる刺激は、彼自身も予測できぬものと思われる。だからこそ、一人の表現者としてのモチベーションは高まりに高まっている。 ◇NOAHという団体を代表してリングに挑む 対する丸藤は、今や数少なくなったNOAHの旗揚げメンバー。武道館ではダブルメインイベントとして、自分たちのあとにGHCヘビー級王座を懸けて闘う王者・清宮海斗と挑戦者・YOICHI〔全日本プロレスに入門後、NOAHでデビューした杉浦貴と、潮崎豪によるタイトル戦を別とすると団体生え抜き同士による頂上決戦は初〕や、カリスマ性を誇る拳王などが主力として活躍するなかで、その立ち位置を模索してきた。 昨年9月17日、これもドリームマッチとして実現したウィル・オスプレイ戦は敗れたものの、その年のベストバウト候補になるほどの名勝負となった。最先端のプロレスを体現するオスプレイと熱狂空間を生み出したことで、これほどのキャリアを重ねた段階でも新たな自信が芽生えた。 「(隣に座るAJをチラリと見て)非常に強いオーラを感じています。AJスタイルズという人間は、試合の内容、結果、オールマイティーな部分も含め、世界のトップレスラー。日本のレジェンドたちと闘ってきた僕というふうに言ってくれていますけど、彼はアメリカでもっとモンスターみたいな選手たちをしっかり攻略し、結果を残し、それでプロレスを広め、カリスマ性を輝き放ち、今なおトップでいる。 明日、リング上で相対したときに、どんな感情になるのか楽しみです。今、世界のプロレスが動き始めていると思うので、NOAHに目をつけていただけたことは光栄。WWE対NOAHでいうなら、他にも強い選手はいますけど、一発目はこれ(丸藤vsAJ戦)でいいと思っています」 今後、NOAHとWWEの交流がどのレベルまで進むかは、もちろん現時点で断言できないが、丸藤が言ったとおりファーストインパクトとして、この二人のシングルマッチは申し分ない。オスプレイは自身のヒーローである丸藤に、またNOAHに対する思い入れを最大限のリスペクトを込めて、試合のなかで体現した。AJは、また違った角度から自分が培ってきたキャリアで見たもの、感じたことをリング上で形にするはずだ。 「すごく日本が恋しかった。自分とマルフジはお互いをリスペクトしているが、明日、リングに上がったら、その気持ちは吹っ飛んでしまうかもしれない。それほどの熾烈な闘いになるだろう。そのなかで、誰もがフェノメナール(驚異=AJのキャッチフレーズ)を感じる試合をお見せする」 強さ、スゴさ、素晴らしさ……プロレスには、いくつものポジティブな要素がつまっている。一つの試合でそれらのすべてを味わいたければ……明日の丸藤正道vsAJスタイルズを体感すればいい。 (取材:鈴木健.txt)
NewsCrunch編集部