お寺に神様 御利益抜群のリングネームを持つテンプル神原が目指す史上最強の住職へ
◆プロボクシング ▽50・3キロ契約8回戦 長尾朋範―テンプル神原(6月26日、東京・後楽園ホール) 史上最強の僧侶を目指すプロボクサーがいる。その名もテンプル神原(協栄)。「テンプル(寺)」に本名の”神”原から付けられた神仏習合の何とも縁起のいいリングネームを持つ僧侶が来月26日、初のメインイベンターを務めることになった。記念すべきプロ10戦目は好戦的な右ボクサーファイターの長尾朋範(フラッシュ赤羽)との一戦。「できれば倒して勝ちたい」と初のKO勝利を目指す。 故郷の佐賀・三養基(みやき)郡基山町にある実家の大興善寺は「つつじ寺」の愛称で親しまれる717年開創の由緒ある天台宗のお寺だ。将来99代目の住職となる予定だが、現在は深大寺そばで有名な東京・調布市の深大寺で修行中。毎日、朝の掃除や鐘を鳴らすお勤めをしながら週4、5回のペースでジムに通う。応援してくれる人も増え、「近所のそば店4、5店舗にスポンサーになっていただいています」と思わぬお布施もいただいている。 大正大2年時にボクシング好きの先輩から勧められてジムに通うようになった。「殴り合うだけじゃない駆け引きが面白くてはまりました」。比叡山延暦寺での修行では野菜と米だけの食事で半年間過ごしたことがあるが、「減量はまた違います。きついです」と笑う。 戦える体を作るため現在は普段からタンパク質を摂取しており、檀家の法事後の施しでは寿司や肉類なども「断りません」。58キロほどある体重を、フライ級(50・8キロ以下)で戦う場合には1か月ほどで脂質を削って8キロほど落としていくのだという。 これまで7勝を挙げているがすべて判定勝ち。「試合をしていても頭に血が上ったことがない」と穏やかな表情を見せる。スタイルもヒット&アウェーのアウトボクシング。それでもやはりKO勝利を「してみたい気持ちはあります」。 父で現住職の玄應さんは当初、後継ぎが顔を腫らすことに難色を示したが、今は東京に駆けつけるほど応援してくれている。そんな家族のために30歳をメドに実家を継ぐための準備を整えるため、帰郷する予定でいる。「東京で学んだことを伝えたい。実家では静かにお経を上げているけれど、深大寺のように太鼓やホラ貝を使って迫力を出したいなと」僧侶としての務めも忘れていない。 大好きなリングに立てる時間は限られている。初のメインに「うれしい。やってきたことが少しは形に残ったのかなと。これからは強い相手ばかりとの対戦になる」と気を引き締める。右アッパーが得意な法名・玄裕が必勝を期してゴングを待つ。 戦績は29歳の長尾が8勝(5KO)2敗1分け、26歳のテンプルが7勝2敗。 ◇テンプル神原(かみはら) 本名・神原明裕(あきひろ)。1997年7月13日、佐賀・基山町生まれ。26歳。中学時代は野球部。プロ野球DeNAの浜口遥大投手の母校でもある三養基高では1年時は野球部、2、3年時は陸上部。大正大2年からDANGAN青木ジムでボクシングを始める。19年6月にプロデビュー。昨夏、協栄ジムに移籍。身長166センチの右アウトボクサー。
報知新聞社