台湾総統選挙と台湾有事:有事の際の日本のGDP押し下げ効果は1.4%~6.0%と試算
台湾との輸出入停止で日本のGDPは1.38%押し下げられる
1月13日に投開票が行われた台湾総統選挙は、事前予想通りに中国に対して強硬的な姿勢をとる与党・民進党の頼清徳候補が勝利を収めた。有権者は中国と距離を置くことを選択したと言える。これによって、中国との間の緊張関係は、これまでと同様に続くことになる。将来的に台湾有事が生じるリスクが世界で強く意識される状況も続く。 台湾有事の際に台湾が中国によって封鎖状態となり、その結果、日本と台湾との間の貿易が途絶えてしまう場合を想定し、その日本経済への打撃について、以下では検討してみたい。 台湾は日本の輸出先としては、中国、米国、韓国に次ぐ第4位であり、輸出全体の5.0%(2021年度)を占めている。仮に日本から台湾向けの輸出が1年間停止すれば、日本の名目GDPはその直接効果だけで0.90%押し下げられる(コラム「台湾有事の経済損失試算:国内GDP1.4%下落」2022年8月4日)。 他方、台湾からの輸入品が停止する場合、それが国内品に代替されれば日本のGDPにプラスの効果が生じるものの、それ以上に、サプライチェーンの混乱を通じて日本の経済活動に深刻なマイナスの効果が生じることが懸念される。その代表格は半導体である。 2021年に日本が輸入した半導体の46.7%は台湾製だった。日本では製造ができない高性能のロジック半導体の多くを、日本は台湾に依存している。現在、日本で利用される半導体の33%は、台湾からの輸入品である。そこで、高性能半導体を用いていると推察される8分野に注目する。具体的には自動車部品、玩具(ゲーム機など)、パソコン、携帯電話、家電、液晶パネル、医療用機器、ロボット、である。台湾からの半導体の輸入が止まることで製品の一部が作れなくなり、この8分野の生産がそれぞれ1年間33%減少する場合を考えると、日本の名目GDPは0.48%押し下げられる計算となる。 これを、台湾向け輸出が停止する経済効果と合計すると、(名目及び実質)GDPの押し下げ効果は1年間で1.38%となる。