私、スキップ失敗しないので 「劇場版ドクターX」出演の岸部一徳さんインタビュー
フリーランス外科医の活躍を描いた人気テレビドラマシリーズ「ドクターX~外科医・大門未知子」(テレビ朝日系)が公開中の劇場版で完結します。2012年から12年続き、米倉涼子さん演じる未知子の「私、失敗しないので」という決めぜりふもおなじみに。未知子の師匠である元外科医で名医紹介所所長・神原晶を演じた岸部一徳さんが最終作への思いを語りました。 【写真】映画でも、私、失敗しないので 「劇場版ドクターX」の出演者たち -最終作の今回は未知子と晶の過去が描かれ、未知子はかつてない危機に直面します。 ★岸部 テレビドラマで12年間積み重ねてきたので、映画を撮りたいなとは思っていました。今回は医療ドラマとして、医学の進歩の可能性にもつなげたストーリーになっています。 -このシリーズの魅力とは? ★岸部 一番は天才外科医・未知子の魅力ですよね。ドラマとはいえ、見ている人たちは「こういう医者がいてくれたらいいなあ」という見方をしていると思います。それから西田敏行さん演じる大学病院トップとの対立構造の面白さや、名医紹介所での日常など、シリアスな部分と面白いシーンの両方が楽しめるからだと思います。 -岸部さん演じる晶は、高額の報酬を得て病院からスキップしながら帰るなど、コミカルな演技が多くありますね。 ★岸部 ちょっと女性っぽい話し方をするんですが、その話し方に慣れるまでは…。でも、やってるうちにそれが普通になってきましてね。スキップも楽しくやらせていただきました。 -岸部さんにとってこのシリーズはどんな作品ですか。 ★岸部 一つの役を10年以上やることはなかなかないので恵まれたと思いますし、撮影現場での楽しさやレギュラーの仲間とのつながりは、この作品が一番良かったと思います。ただ78歳の僕とは違って、他の皆さんはこれを超えて他の作品につなげなければならないと思うので、この作品が生涯最高のもので終わってほしくないですね。 -西田敏行さんの最期の作品となりました。 ★岸部 僕が俳優として新人のときに連続ドラマで共演しました。西田さんは主演として活躍されていましたが、同い年なのでいろいろな話をしました。大尊敬できる俳優さんです。人間性も優れている素晴らしい人でした。ただただ、残念ですね。 -映画では晶と未知子の絆が描かれていますが、米倉さんとも長い共演となりましたね。 ★岸部 晶と未知子は師弟関係からスタートして、けんかしたり、泣いたり笑ったりしていく中で、それ以上のものが生まれている。今回その蓄積した感情が表現されていました。米倉さんには仲良くしてもらいました。本当にありがたいことですけど、実の娘以上に健康のことをいつも心配してくれています。 -ミュージシャンの経験が演技に生きることはありますか。 ★岸部 音楽のリズムでドラマの面白さや作品を考えたりします。僕が相手との会話のテンポを変えたり、間を取ったりするのには音楽が生かされていますね。このシリーズはテンポや間の取り方などのリズムがすごく良かった。だから見ている人は心地よかったのではないかと思います。 -これで未知子、晶とはお別れです。 ★岸部 レギュラーの人たちと会う機会が少なくなるかもしれませんね、自然に。それが寂しい感じもします。 -これから挑戦してみたいことは? ★岸部 挑戦はないですが、せっかく年を取ったんで、この年になってからできる役というのがありそうな気がします。 -これから映画を見る人へメッセージをお願いします。 ★岸部 僕は劇場版を見たとき、自分にとって大切な人を再認識しました。自分にとって大切な人はこの人かな、と感じる、そういう映画はなかなか珍しいと思います。映画館の大きいスクリーンで見ていただければと思います。 (文・山本孝子、写真・佐藤雄太朗)
きしべ・いっとく
1947年生まれ、京都府出身。67年「ザ・タイガース」のベーシストとしてデビュー。71年に解散。75年にドラマ「悪魔のようなあいつ」で俳優に転身。映画「死の棘(とげ)」(90年)で第14回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞。主な出演作に映画「その男、凶暴につき」(89年)、「アウトレイジ 最終章」(2017年)など。