“政治とカネ”が透明化? 個人政治献金は定着するのか
自民党派閥の裏金問題は、改めて“政治とカネ”の問題の根深さを露呈させた。一方で民間では、透明度の高い政治献金を実現させる試みが始まっている。 【写真を見る】「娘は人気インフルエンサー」 逮捕された池田佳隆議員
その一つが小口個人献金システム「WiN JAPAN(ウィンジャパン)」だ。開発と運用を担うのは、SNS動画やウェブサイト制作、選挙マーケティングなどを手がけるIT企業のJapan Pride(東京都大田区)で、同社の名嘉眞要社長が言う。 「100円から数十万円単位まで、スマホで決済可能な政治献金プラットフォームを作りました。本来、政治家への献金は地縁や血縁、所属政党や会派、派閥などのしがらみにとらわれず、人柄や政治信条、理念や政策への取り組みなどを総合的に評価して行うべきもの。それを実現させるのが個人献金だと考えています」
「“健全な圧力”に」
政治献金を巡る事件は、戦後も昭和23年の昭電疑獄、昭和51年に田中角栄元総理が逮捕されたロッキード事件、昭和63年に発覚したリクルート事件、近年も平成16年に世間をにぎわせた日歯連ヤミ献金事件など枚挙にいとまがない。 「派閥や資金パーティーの是非はともかく、政治活動には一定の資金が必要。それなら選挙の時だけ街宣車から投票を呼びかけるのではなく、普段から自分がどんな政治家なのかを有権者に訴えて金銭的な支援を求めればいい。不透明でアナログな資金パーティーの開催や、派閥の長におもねる必要もなくなります。献金は“可視化された票”ともいえるので、国民が政治家に政策の実現を求める“健全な圧力”にもなりますね」
共和党を大きく上回る献金を獲得
ウィンジャパンが念頭に置くのは、アメリカにおける個人献金の集金モデルだ。 「アメリカでは共和党が“ウィンレッド”、民主党は“アクトブルー”という資金調達のためのプラットフォームを活用しています。そこでは地方や州、あるいは連邦政府の公職に立候補している人物をはじめ、政治団体や慈善非営利団体への献金が可能なシステムが整備されているんです」 一般に共和党の支持者には中流から富裕層が多く、民主党の支持者は中流から低所得層が中心とされる。 「ブッシュ大統領父子には、テキサス州などの石油関連事業者から計数十億ドルもの巨額の献金が提供されました。トランプ大統領も、潤沢な資金を持つ資産家や投資家から巨額の献金を受けていましたが、2022年の中間選挙の際に、より多くの献金を集めたのは民主党でした。彼らが前出のサイトで集めた総額は約7億5千万ドル(約912億円)で、共和党の約5億2千万ドル(約624億円)を大きく上回っています」