三陸鉄道が6日全線復旧へ 被災地の思い背負い「再出発」
南米チリ沖地震で高まった緊張
ところが、三陸鉄道全線復旧の日を目前にして、思わぬ出来事が起きました。それが、4月2日に発生した南米チリ沖地震です。 日本から遠く離れたチリですが、昭和35年に発生したチリ沖地震では、5メートル超の津波が三陸沿岸部にも押し寄せました。今回は、それに加えて翌日に岩手県でも震度4の地震が発生しています。東日本大震災で決壊した防潮堤は、まだ完全には修復できていません。巨大な津波が襲来したら、ひとたまりもない状況です。2つの地震で、三陸の緊張感は一気に高まりました。 しかし、行政や三陸鉄道をはじめ現地の人たちは冷静でした。津波注意報が発令されると、三陸鉄道はすぐに全線で運転を見合わせました。そして、南リアス線では、綾里駅(りょうりえき)に車両を避難させたのです。高台にある綾里駅は、東日本大震災でも津波による被害はまったくありませんでした。4月2日の地震で、三陸鉄道は災害への備えを発揮したのです。 鉄道は単に人を移動させる手段ではありません。安全・安心に人や物を運ぶことも重要です。災害に対する意識や体制を強化した新生・三陸鉄道は、今後の鉄道会社の模範になるべく、間もなく再出発します。 (小川裕夫=ライター)