「走塁改革」の報徳学園か、「機動破壊」の健大高崎か センバツ
第95回記念選抜高校野球大会は第6日の24日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2回戦の健大高崎(群馬)―報徳学園(兵庫)戦がある。ともに機動力を持ち味とする。「機動破壊」を代名詞とする健大高崎か「走塁改革」を推進する報徳学園か。実力校同士の初戦屈指の好カードだ。 ◇阪神などで活躍したコーチが指導 健大高崎は青柳博文監督のもとで、2011年ごろから「機動破壊」のスローガンを掲げ、機動力重視の戦い方を実践してきた。12年センバツでは4試合で16個の盗塁をし、初出場で4強入りを果たした。走るイメージが相手に恐怖心や重圧を抱かせ、心理的優位に立つ。「機動破壊」の名を全国に知らしめた。 現チームは「機動破壊」の色が濃いチームだ。というのも、15年の春夏の甲子園メンバーだった小谷魁星コーチが20年に就任したことが大きい。高校時代から走塁を得意とした小谷コーチが、走塁練習を「盗塁」「戦術的盗塁」「走塁技術」の三つに分け、計50以上の練習メニューを用意し、徹底的に走塁のノウハウを伝えている。 青柳監督は「小谷コーチのおかげで走塁力が高まった。ここ数年の中では最も足が使えるチーム」と効果を実感する。昨秋の公式戦で計7盗塁の増渕晟聖選手(3年)は「塁に出ればどこからでも走れる。最多盗塁を出して甲子園を沸かせたい」と意気込む。 一方、報徳学園も永田裕治前監督(現・日大三島監督)から引き継いで就任7年目の大角健二監督のもとで、3年前からリード幅を広げたり、積極的に次の塁を狙う意識を持たせたりするなどの走塁改革に着手している。 さらに、走塁意識の高まりに寄与しているのが、プロ野球の阪神などで活躍し、21年春にコーチに就任した葛城育郎さんだ。葛城さんは代打として現役時代にベンチで相手投手を観察するなどした経験から、「準備の大切さ」を選手たちに説いている。大角監督は「『葛城イズム』は打撃、走塁両方に生きている。走るための心の準備をしているから、1球目から思い切ったスタートができるようになった」と強調する。葛城さんも「一つ先の塁を狙う準備をすれば、結果としてアウトになっても問題ないという意識が浸透してきた」と語る。 昨秋は計12試合でセンバツ出場36校中2位の計34盗塁をマークし、大半がノーサインだった。近畿大会決勝の大阪桐蔭戦では、高いけん制技術を持つ世代最強左腕・前田悠伍投手(3年)相手に盗塁を一つも決められなかったが、大角監督は「『次こそは前田から走ってやろう』という意識がチームにある」と指摘する。 今冬は、右利きの磯野剛徳部長が左投げで前田のフォームやけん制の癖をまねた投手役を務め、実戦的な走塁練習を繰り返したという。「宿敵」を倒すために走塁技術をさらに向上させた。 一瞬の隙(すき)をついて次の塁を狙うことができる、健大高崎と報徳学園。「まばたき厳禁」の一戦だ。【大東祐紀】