「不快な思いをしたり、心を痛めた方がいるから記事になったのではないか」甘糟りり子が松本人志の謝罪を謝罪と思えない理由
今年1月、「週刊文春」で報じられたダウンタウン・松本人志の飲み会での複数女性に対する性加害疑惑。松本側は「事実無根」を主張、名誉毀損だとして、文藝春秋社に対して5億円を超える賠償を求める訴訟を起こしたが、11月8日、その訴えを急遽取り下げた。その顛末に、作家の甘糟りり子氏は疑念と危惧を持つ。 松本人志の謝罪の意味するものとは
これほど不誠実な謝罪もめずらしい
松本人志は週刊文春を相手に「筆舌に尽くし難い精神的損害を受けた」との理由で、5億五千万円の損害賠償を請求していた。それが11月8日に突然訴えを取り下げた。11日には女性たちが証人として出廷する予定だったという。週刊文春は女性たちへの公な謝罪を条件に取り下げに同意。 松本人志による記者会見はなく、コメントを発表した。もしかして「謝罪」と思われるのはこの部分である。 「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方がいらっしゃるのであれば、率直にお詫び申し上げます」 あくまでも仮定のような物言いには驚く。不快な思いをしたり、心を痛めた方がいるから、週刊文春の記事になったのだ。これほど不誠実な謝罪もめずらしい。率直なお詫びなんかではないし、そもそも謝罪になっていない。自分は認めないと言い張るのなら、きちんと裁判で証明すればいい。 松本人志を擁護して、復活させたいメディアや関係者はやたらと「強制性の有無を示す物的証拠はないこと」を強調して発信するけれど、だからといってイコール強制的な性行為がなかった証明にはならない。それ以前に飲み会の間はスマホを没収しておいて証拠がないとは、あたかもこうした未来を予想してスマホを取り上げた気さえする。まるで闇バイトの世界ではないか。 松本人志側が自分の提訴を取り下げただけであって、彼の言い分が通ったわけでも、性加害がなかったと証明されたわけでもない。それをあたかも「裁判が終わって、潔白が証明された」ように報道し、芸能活動の復活への道筋を作ろうとすることに危険を感じる。 この件に関しての元テレビ朝日法務部長の西脇亮輔弁護士を取材した記事を読んだ。同氏は本件の裁判記録を回覧し続けてきたという。擁護する人たちにはぜひこれを読んで欲しい。告発した女性たちへの嫌がらせとも取れる要求は脅しというように私には見えた。それについて擁護する人たちがどう思うのか知りたい。 あまたの吉本興業関連の「芸人」と呼ばれるタレントたちや厚顔無恥の立川志らくみたいな「お仲間」たちが真実を知ろうともせず(中には知っている人もいるのかもしれないが)、強い者=吉本興業に撒かれるが如く彼を擁護するのは想像がついた。