A代表の失敗を繰り返さない。U-23日本代表がロングボールにやられなかったわけ【西部の目/U-23アジアカップ】
サッカーU-23日本代表は現地時間19日、AFC U-23アジアカップカタール2024・グループリーグB第2節でU-23UAE代表と対戦し、2-0の完勝を収めた。この結果により、最終節を残してのグループ突破が決まっている。先発7名を入れ替え臨んだ一戦、勝因はどこにあったのか。(文:西部謙司) 【動画】U-23日本代表対U-23UAE代表 ハイライト
●U-23日本代表が作った良い条件 U-23UAE代表に2-0で快勝。最終戦を待たずしてグループリーグ突破を決めた。 最初のコーナーキックを相手DFが弾き返せず中央にこぼれていて、U-23日本代表の武器であるセットプレーはチャンスになりそうな予感があった。山田楓喜のスピードのあるボールに対応できていなかった。 8分には中央左寄りのFKを荒木遼太郎が短く山田につなぎ、山田のクロスを木村誠二がヘディングシュート。さらに11分にはクロスではなく、山田がペナルティーエリア右角付近から強烈なシュート。26分には山本理仁の斜めのクロスボールに佐藤恵允が飛び込み、GKの前に出て頭で合わせる。 いずれも得点にはならなかったものの、山田と山本の左足から繰り出される高精度のスピードボールは相手に大きな脅威を与えていた。 先制点は左CKを山田が大きくファーサイドへ蹴り、受けた山本がペナルティーエリア右角からクロスボールを送ると、木村が打点の高いヘディングで合わせて決めた。 11分のGKにセーブされた山田の惜しいシュート、得点になった山本のクロスは、いずれもペナルティーエリアの右角あたりから蹴られている。 山田のシュートの直前には、川﨑颯太がポケットに走り込んでパスを受け、それを山田に戻していた。このポケットをとってからのバックパスは初戦でも見られていて、右サイドにいる左利きのクロッサーを活かすためには有効だ。ポケットをとることで相手のディフェンスラインは押し下げられているので、山田のためのスペースが生まれると同時に、よりゴールに近い場所へインスイングのクロスを入れられるメリットがある。 得点につながった山本のクロスの場面は、CKからだったので相手はすでにゴール近くを固めていた。その密集を飛ばしてフリーの山本へ届けたので、状況としてはポケットをとって下げた場合に似ている。いずれも左足で速いクロスを右から入れるための良い条件を作っていた。 ●日本が苦手なロングボールへの対処 結果は完勝に近いが、前半はUAEもトップのスルタン・アディル・アルアメリへのロングボールからチャンスを作り出していた。途中からこれを封じたのも勝因の1つだ。 アディルはロングボールの落下点に着実に入り、DFとの競り合いにも強さを見せていた。主に木村とのマッチアップでは優位性を示している。強力なターゲットマンへのロングボールは、アジアカップで日本代表に対してイラク代表、イラン代表が行っていて、いずれも日本は敗れていた。日本対策として定番になりそうな攻め方だ。 しかし、U-23日本代表はその轍を踏まなかった。アディルと競り合う選手のカバーを他の選手が着実に行っていた。そして、むやみにラインを下げることもなかった。セカンドボールが発生する地点がゴール近くではなく、相手にこぼれ球を拾われたときにもある程度対応できる状態になっていた。 ただ、それ以上に大きかったのはロングボールの出どころにプレッシャーをかけられたことだろう。 U-23UAE代表はゴールキックをGKから左右に大きく開いたCBへつないでいた。しかし、そこからパスをつなぐのではなく、主に右のCBからアディルないし右FWのヤセル・ハッサン・アルブルーシの頭上へロングボールを蹴る。この手順がわかってからは、FWが速く相手CBに寄せていくようになった。そのため後半からロングボールをあまり蹴らなくなり、最も脅威だった攻め手がなくなった。U-23UAE代表のCBは左右に大きく分かれているので、ボールを奪われたら致命的な状況に陥る。そのリスクを負えなくなったわけだが、U-23日本代表が相手のやり方に対処したタイミングは早かった。 ●ターンオーバーで過酷日程に対応 相手の長所を消し、自分たちの武器をつけたU-23日本代表の優位は明らか。守備時は4-5-1で構えるU-23UAE代表だったが、インサイドハーフが前に出てプレスをしないので、楽々とボールを運ぶこともできた。 前半から決定機を数多く作って圧倒しているわりに1点に終わったのは気になったが、66分に2点目をゲット。大畑歩夢がオーバーラップしてゴールラインぎりぎりから折り返すと、川﨑がフリーで走り込んでヘディングシュートを流し込んだ。61分にもオフサイドにはなったが、大畑のクロスから荒木がニアでコースを変えてネットを揺らしていた。 その後も5回ほどあった決定機を決めきれなかった課題は残ったが、危なげない試合ぶりで勝利。中2日の試合とあって先発7人を入れ替えていたが、チームとしての機能性は保たれていて、日程が過酷なこの大会への準備が整っていることをうかがわせた。 (文:西部謙司)
フットボールチャンネル