【特集】育成現場からのSOS『盲導犬』が今、危機に…人出不足・資金不足で年々減少していく中、ボランティアや社会復帰目指す人たちと取り組む「新プログラム」の実情と課題
「見通しが悪いカーブでは、一旦止まる」「人が安全に歩けるように、誘導する」―それが、盲導犬の仕事です。犬が1歳のころから約1年をかけて訓練が行われますが、人の命を預かる盲導犬になれるのは、30パーセント程度。盲導犬の数も訓練士の数も、不足しているのが現状です。盲導犬育成の現場の実情と、新たな取り組みを取材しました。 【動画で見る】年々減少する盲導犬、とりまく環境に今何が…?育成現場からのSOSと新たな可能性
「全てが前向きに生きられるように」…“代えがたい存在”の盲導犬、需要と供給が追い付かない現状
先天的な病気で目が不自由な小林明美さんは、週に5日、名刺に点字を打つ仕事をしています。 (小林明美さん) 「名前は、チュラといいます。女の子です。結構“やんちゃ”なところもあるような子で。でも一生懸命、仕事はしてくれます」
毎日の通勤や外出するときは、いつもチュラと一緒です。 (小林さん) 「盲導犬と歩くことが、楽しいです。風を切って歩ける…そういうことに、すごく感動して」 小林さんの夫・常利さんも、視覚障害があります。13年前に盲導犬のユーザーになってから、気持ちは大きく変わったといいます。 (小林さんの夫) 「もう生活がコロッと変わりました。全てが前向きに生きられるようになりました」
盲導犬は、目が不自由な人の生活を支える「代えがたい存在」です。しかし、その数は年々減少。 国内で利用を待つ視覚障害者約3000人に対し、活動している盲導犬は800頭強と、供給が全く追いついていません。盲導犬を取り巻く環境に、一体何が起こっているのでしょうか―。
頼みは「ボランティア」や「パピーウォーカー」 しかし、持続的な確保が大きな課題
大阪・千早赤坂村にある「日本ライトハウス盲導犬訓練所」。この訓練所では、年間18頭前後の盲導犬を輩出しています。現在は、盲導犬候補の23頭の犬が訓練を受けていますが、運営は決して楽なものではありません。 (社会福祉法人・日本ライトハウス盲導犬訓練所 赤川芳子所長) 「やはり寄付に頼っている事業ですので、どうしても景気に左右されてしまうというところが、大きいです」
盲導犬を育成するためには、一頭当たり約500万円から600万円の費用がかかります。そのうち、行政からの助成金は2割程度で、ほとんどが寄付金で賄われています。しかし、コロナ禍の影響で続く景気の悪化で、寄付金は半減しているのです。
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