「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか
「低価格なのに高収益」が、BSEで一転
この数字に大きな変化をもたらしたのが、2003年末に発生した狂牛病(以下、BSE)でした。米国でBSE感染が確認された牛が見つかったことで、世界的に牛肉の安全性への懸念が広がるとともに、日本政府も米国産牛肉の輸入を全面的に停止したのです。 当然のことながら、これは日本の牛丼ビジネスにも大きな影響を与えました。BSEの影響で、2004年度の吉野家HD、および吉野家単体の営業利益率はそれぞれ-1.0%と-1.9%と、これまでの好調ぶりから一転、マイナスとなりました。松屋フーズHDもマイナスにこそならなかったものの、4.9%と大きく数字を落としました。 このタイミングで唯一数字を落とさなかったのが、すき家のゼンショーHDです。事業を多角化していたこともあったためか、2004年度の営業利益率は3.4%と、BSE以前とそこまで大きく変化することはありませんでした。牛丼3社のなかで、一番痛手が少なく、うまくBSEの時期を乗り切ったといえるかもしれません。 BSEは営業利益だけでなく、CCCにも大きな影響を与えました。2000年~04年の価格戦争の際は好調だったCCCが、BSEを機に徐々に悪化し始めました。吉野家HDはビジネス形態が変わったため、一概にBSEのみの影響とは言い切れませんが、牛丼ビジネスのみの松屋フーズHDのCCCも悪化していることから、やはりBSEは牛丼業界にとって大きな影響を及ぼしたといって良いでしょう。
BSE後頭一つ抜けたのが、すき家のゼンショー
日本における米国産牛肉の輸入規制と、その後の規制緩和を経て、吉野家はBSE発生から約1年半後に牛丼を再開しました。しかし、営業利益率はBSE前の水準には遠く及ばず、吉野家単体で2005年度と2006年度は2~3%台に、吉野家HDとしても2%台という低水準となりました。 一方、すき家と松屋は、BSEに対して迅速な対応を行っていました。すき家はすぐにオーストラリア産牛肉に切り替え味付けを変更し、松屋は豚丼などの代替品を提供し、その後オーストラリア産牛肉で対応するなどしていました。 こうした柔軟な対応により、吉野家よりも牛丼を早く提供でき、それが功を奏したのか、松屋フーズHDは2005年度の営業利益率は6.5%。BSEより前の水準には戻ってはいないものの、吉野家よりも数字を戻すことに成功しています。 ここでも頭一つ抜けていたのが、すき家のゼンショーHDでした。ゼンショーHDの営業利益率は、2005年度に7.3%にあがっています。BSE発生後、迅速にオーストラリア産牛肉への切り替えを行い、牛丼の販売を継続したこと。 それにより、お客はすき家に流れ、売り上げを拡大できました。また、牛丼以外のメニューも充実させ、多様な顧客のニーズに応える姿勢をみせたことも功を奏したと考えられます。