銀行跡地がクリエイターの“百貨店”に! 地域の新拠点(BANK)が南大沢にオープン
コロカルニュース
■食品、衣類とバッグ、家具、建築。衣食住にまつわる4つの事業者が入居 八王子市南大沢に複合施設〈(BANK)〉がオープンしました。南大沢は日本最大規模のニュータウン、多摩ニュータウンの一画。1981年に建てられた団地の中にある南大沢3丁目商店街にあります。 【写真で見る】入り口すぐそばには、人気ベーカリー〈チクテベーカリー〉による運営の〈cicoute kiosque〉があります。 名前は建設当初、銀行として使われていたことに由来します。入居しているのはパン屋さん、家具作家、バッグと洋服の作家、そして建築設計事務所という4つの事業者。ショップやショールーム、アトリエなど、利用方法はそれぞれです。 足を踏み入れると、天井も壁もコンクリートが剥き出し。しかもお店の区切りが、はっきりしていません。家具作家さんによるダイニングテーブルが目に入り、倉庫のようなブースの付近には帆布のトートバッグやコットンの洋服が置かれています。 バッグと洋服は、鈴木厚司さん、美紀さん夫妻によるもの。バッグは〈AM〉というブランド名で厚司さん、洋服は〈すずきみき〉というブランド名で美紀さんが手がけます。ふたりはこれまで主に屋外イベントで商品を販売してきました。厚司さんは、区切られたスペースをアトリエとして使っていて製作も行っていて、その姿が垣間見られるようになっています。 家具のブランド名は〈hyakka〉といいます。木工作家で家具職人の岡林厚志さんによるものです。これまでは神奈川県相模原市の自宅兼工房で家具を希望者に見せていましたが、(BANK)がより多くの人に家具を見てもらえる常設のショールームとなりました。 入り口のすぐそばには、シェルフを使った〈cicoute kiosque〉があります。駐車場を挟んだ斜め向かいある人気ベーカリー〈チクテベーカリー〉による運営です。生産者から直接届く米や野菜、チーズ、ソーセージなどを販売するほか月曜日と水曜日はチクテベーカリーから通常とは違うパンやお菓子が並びます。火曜日と木曜日は独立を目指すチクテベーカリーのスタッフ2名によるオリジナルブランドのパンやお菓子が販売されます。 いちばん奥に秘密基地のような事務所スペースを自らつくって、利用しているのが建築家の北原暁彦さん。(BANK)の設計も担当しました。 ■商店街を復活させたベーカリーと建築家が中心となって 南大沢3丁目商店街は、奇跡の復活を遂げたとメディアで取り上げられたことがある商店街です。その復活の立役者が人気のパン屋さん、チクテベーカリーです。 2013年、オーナーの北村千里さんが、隣駅の多摩境から南大沢にお店を移転。このとき店舗の設計を手掛けたのが、建築家の北原さんでした。当時、南大沢3丁目商店街はスーパーが撤退し、人影もまばらなシャッター商店街でした。チクテベーカリーができたことがきっかけとなって人の流れが変わり、周辺の空きテナントにもお店が入り、賑わいが戻ったのです。 2023年4月、チクテベーカリーの修理に立ち会っていた建築家の北原さんにとって「ここに俺は呼ばれた」というほど魅力的に映ったのが現在(BANK)のある場所です。クリーニング店が閉店してから数か月経って内装が取り払われて広さや天井の高さまで外からも見える状態でした。 北原さんは2013年当時にあった広い空きテナントを見て、ものづくりをする人ばかり100人で借りて、それぞれが、作品に込めた気持ちも伝えられる“百貨店”を開いたらどうだろうと構想していたのだとか。そして10年後に空き物件を目にして、今こそタイミングが訪れたと行動を開始。チクテベーカリーの北村さんも賛同し、近隣でものづくりをする仲間を集め、要望に合わせた設計でスペースをつくり上げました。