「ぼくは麻理のなか」「君の名は。」など、男女入れ替わり物語のルーツとは?
先月から放送中の池田エライザ主演ドラマ「ぼくは麻理のなか」(フジテレビ系)が面白い。原作は押見修造氏の人気漫画で、吉沢亮演じる男子大学生・小森功が池田演じる憧れの女子高生・吉崎麻理の中に入ってしまう。今年3月31日に同局の有料動画配信サービス「FOD(フジテレビオンデマンド)」で全話一気にライブストリーミング配信された際も話題になった。 「ぼくは麻理のなか」は単純な男女入れ替わりではなく、タイトルの通り、麻理の中に入った功が、麻理の中身がどこへ行ったか探し始めるミステリー仕立て。同局の公式サイトでも「新感覚“男女入れ替わり”ドラマ」として宣伝されている。それ自体がメインではないが、心と体が入れ替わることによるセクシュアルなシーンも盛り込まれている。
過去にも人気が高かった「男女入れ替わり」がテーマの映像作品
男女入れ替わりをテーマにした作品は、珍しくはない。昨年大ヒットした新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」は、山深い田舎町に暮らし都会に憧れる女子高生・三葉が、東京で暮らす見知らぬ男子高生・瀧と入れ替わってしまう設定。瀧を神木隆之介、三葉を上白石萌音が演じ、美しく繊細な情景描写とファンタジックかつロマンティックなストーリー展開で幅広い年齢層に人気を博し、映画館は連日満員となった。現在、J・J・エイブラムスらのプロデュースにより、ハリウッドで実写映画化される計画が進行中だ。 人気脚本家の宮藤官九郎も、2003年放送のドラマ「ぼくの魔法使い」(日本テレビ系)で男女入れ替わりを描いている。伊藤英明と篠原涼子が超ラブラブでバカップルな夫婦を演じるコメディだが、篠原演じる町田留美子が自転車事故で衝突、やがて古田新太演じる実業家の田町浩二と外見が入れ替わるようになってしまう。篠原と古田の見事なまでにはじけた変身っぷりが笑いを誘った。
名作「転校生」も そして、男女入れ替わりの物語のルーツ的とは?
また、忘れてならないのは、なんといっても大林宣彦監督の映画「転校生」(1982年公開)だろう。尾美としのり、小林聡美が男女入れ替わりを好演。この作品のヒットで、その後の作品「時をかける少女」「さびしんぼう」と合わせ「尾道三部作」と呼ばれるようになった。広島県の尾道市の知名度をあげたばかりでなく、地元との協力関係の中で映画を作る手法も注目を集めた画期的な作品だった。山中恒氏の児童文学「おれがあいつであいつがおれで」の最初の映画化でもある。その後も何度かドラマ化され、2007年には蓮佛美沙子、森田直幸のコンビで大林監督自身がリメイクもしている。 男女入れ替わり物語のルーツ的に語られるのは、平安時代後期に成立したとされる「とりかへばや物語」(作者不詳)。権大納言の男女2人の子の性格が逆転していたために、男児を姫君、女児を若君として育てていくというもの。「とりかへばや」=「取り替えたいな」という意味だそうだ。性別入れ替わりの物語は人気があり、コミック化もされているほか、ライトノベルなどでもこれをベースにした作品が見られる。 もし男の子になれたら? 女の子になれたら? とくに思春期などは、そう想像したことのある人も少なくないだろう。男女入れ替わりの物語は、未知のものへの憧れの物語ともいえそうだ。 (取材・文・写真:志和浩司)