AZEC首脳会合で東南アジア供給網のCO2可視化に合意 共通ルール整備で日本式も視野
11日にラオスで開催された脱炭素の連携枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）」の首脳会合では、サプライチェーン（供給網）全体にわたる二酸化炭素（CO2）排出量の可視化や脱炭素に向けた資金供給の推進などを盛り込んだ今後10年の行動計画に合意した。日本企業と供給網で結び付きが強い東南アジアに技術や知見を提供し、脱炭素化と経済成長の両立を後押しする。 ■排出量の可視化推進 「ルール形成を含めた政策協調へとAZECを新たな段階に進める行動計画に合意した」。石破茂首相は記者会見で自身が議長を務めた会合の手応えを語った。 AZECは岸田文雄前首相が提唱し、東南アジア諸国連合（ASEAN）加盟国と日豪の計11カ国が参加する。燃焼時にCO2を排出しない水素やアンモニアの利用促進などの政策協調を通じ、アジアに脱炭素の巨大市場を創り、世界の投資を呼び込むことを狙う。 行動計画の柱となるは、CO2など温室効果ガス排出量の算定・報告といった可視化の推進だ。企業がCO2排出の抑制策を策定するには、まず排出量の「見える化」が必要になる。日本では平成18年に地球温暖化対策法に基づき、原油換算エネルギー使用量の合計が年1500キロリットル以上などの要件を満たす企業に、毎年の排出量の算定と国への報告や公表を義務付けている。 ■発言力確保に共同歩調 一方、ASEANではルール整備が遅れており、電源構成をみても、石炭や天然ガスの割合が高い。米グーグルなどが脱炭素エネルギーの調達に本腰を入れる中、脱炭素化の取り組みが遅れれば、グローバル企業の調達からはじき出されかねず、日本の自動車メーカーなどにも影響は及ぶ。 政府はタイやベトナムで日本の方式に基づく排出量算定・報告についての研修などを行い、ルール導入を働きかけてきた。「AZECでそれを結実させない手はない」と経済産業省幹部は強調する。「見える化」を一里塚に、その先に想定される域内の共通ルールづくりの段階では日本方式の導入を視野に入れる。日本企業は供給網全体の排出量が把握しやすくなり、ビジネスの追い風になる。 脱炭素のルールづくりでは欧州が先行している。再生可能エネルギーの導入を急ぎ、石炭火力の廃止の機運を高める欧州に対し、再エネの適地に乏しい日本やASEANは化石燃料の使用を当面継続する現実路線を模索せざるを得ない。AZECで歩調を合わせるのは一定の発言力を確保し、各国の事情に応じた柔軟なルール導入を進める狙いもある。（万福博之）
