日本を代表する振付師集団・s**t kingzのkazukiが語る、メモリアルな作品3選【Nissy、EXO、Snow Manなど】
ダンサー史上、初めて日本武道館単独ダンスライブ公演を成功させたs**t kingzの4人。圧倒的なスキルと表現力を武器にそれぞれが振付師としても活躍しており、国内外のアーティストからの依頼が後を絶たない存在。今回は彼らの濃密なキャリアと振付に対する信念を紐解くべく、特別な思い入れのある作品を挙げてもらった。4人目として、kazukiさんが登場! 【写真を見る】s**t kingzのツアー前リハに潜入!貴重なリハ写真&舞台裏をレポート
about「DIGEST」
連載「DIGEST」(ダイジェスト)は、「食べ物を消化する」という意味から“日に日に進化するs**t kingzを消化する(=深く知る)”という想いと、「要約する」という意味から“活動の幅が広いs**t kingzを要約する(=端的に分かる)”という想いの2つが込められている。まだ見ぬ4人の魅力を深掘りする企画やテーマを毎回設けて、ディープなインタビューアーティクルをお届けする。
テーマは、振付師としてメモリアルな作品3選
メンバーそれぞれが下記より3つテーマを選び、作品を挙げてもらう。 ・自身のキャリアに大きな変化をもたらした作品 ・完成までに最も苦労が大きかった作品 ・完成までに最も時間がかかった(あるいは時間が短かった)作品 ・依頼内容のハードルが最も高かった作品 ・自身の中で最も「踊るのが難しいだろう」と思う作品 ・制作過程で、「これは一生忘れないだろう」と思うエピソードがある作品 ・自身の中で、最も成長を感じるきっかけとなった作品 ・実際に演者がパフォーマンスした時、「想像を遥かに超えた」と感じた作品 ・いい意味で「ファンの反応が想像と違った!」と感じた作品
1.自身の中で、最も成長を感じるきっかけとなった作品 Nissy「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」
2016年の楽曲なので約7年前になりますが、Nissyの「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」で僕は初めて本格的に“かわいい”を狙った振付を作ることになりました。それまで“かっこいい”や“セクシー”を目指したアイデアを出すのは得意だったのですが、“かわいい”は引き出しがほとんどなかったので。オファーをいただいた当初は戸惑った記憶があります。 いざ楽曲を聴かせてもらったら、親しみやすいポップなラブソングで、歌詞はカップルがいろんなハプニングを乗り越えて結婚するまでのストーリーを描いた物語でした。そこで考えたのは、小指を立てながら踊る“ピンキーダンス”(公式ミュージックビデオの01:15)。キャッチーな振付なのでファンの方々に覚えてもらえるかなと思いましたし、ライブ会場でNissyと一緒に踊れば彼と運命の糸でつながっているような感覚になってもらえるかな……と。「同じ振付の繰り返しが多いと飽きてしまうかな?」「初心者の方には難しすぎるかな?」と、悩ましい問題が浮かぶたびにNissyにも意見を聞きました。誰よりもファンの方々のことを考えている彼と一緒に作ったからこそ、絶妙なバランスの振付に仕上がったと思います。 ミュージックビデオが公開されると、当初の目標通りファンの方々が「かわいい!」と絶賛してくれました。Nissyの恋人役として出演していた有村架純さんが振付の魅力を最大限に引き出してくれた影響も大きいかもしれません。その後、Nissyがライブで「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」をパフォーマンスすることになって、僕も会場で見守っていたのですが……思わず泣いちゃいました。たくさんのお客さんがNissyと同じタイミングでピンキーダンスを踊っていて、自分が考えた振付で会場全体がひとつになっている景色に感動しちゃって。しかも演出として、会場の警備員さんやライブスタッフの方々もサプライズで一緒に踊ったので、文字通り“会場にいるすべての人”が踊っている様子は圧巻でした。キメキメなダンスでお客さんを魅了することだけが正解ではないことに気づかされましたし、この曲をきっかけに振付に対する考え方が柔軟になったと思います。 AAAも含めてNissyとは長い付き合いで、ソロプロジェクトも1曲目から関わらせてもらっていますが、妥協を知らない彼と一緒に仕事をするのは……かなり大変です(笑)。こだわりが強いから、こちらの提案を何でも受け入れてくれるわけではないし、振付が完成するまで時間がかかるし、かなり頭も使う。だからこそ、振り返るたびに「あの時間があったおかげで成長したな」と思えるんです。その点でも、Nissyをはじめクリエイティブに強いこだわりを持っている人たちのことを尊敬しているし、同時に感謝もしています。