神田さんが描いたイラスト

（前号のあらすじ）大学時代に同じ学科の男女で結成したグループ『アル中』。そのリーダーが結婚し、彼の自宅でホームパーティーを開催することになった。しかしそこに向かう道中で、彼が大学時代にフェレットを放し飼いしていたことを思い出した愛花。気合を入れて、本革のズボンに超高級バッグという服装にしたが、動物がいたらどうしよう……!? 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回～51回)はこちら ペットを飼っているお宅にお邪魔すると、家主さんからの「可愛いでしょ？　抱っこします？」という流れが必ずある。客人は断れず、全力で「いいんですか!?　可愛い～♡」とリアクションをする。このやり取りは不可避で、礼儀でもある。自分の服装のせいでその流れに対応できないのは避けたい。そのため、いつもなら事前に動物の有無を確認していた。なのに、よりによってフェレット放し飼いの過去を持つリーダーの家に行く時に、そこを聞き忘れてしまうなんて。（いや待てよ。今は奥様の趣味もあるから、流石に飼っていても犬か猫のはず！）。 お宅に到着。玄関が開き……犬ならすぐ走ってくるはずだが、その気配はなし。猫なら先に到着した誰かが気を引こうとしているはずだが、その気配もなし。（よし！ペットなし！）と思いつつ、一応「動物は？」と聞いた。すると奥様が、 「モモンガがいて、今お昼寝中です」 と返してきた。（モモンガ!?）。予想外の答えに絶句。結婚前から飼っていたメスのモモンガと共に、ここに嫁(とつ)いだそうだ。（リーダーと気が合う方だもの、モモンガっていう選択肢があったか！）。自分の想像力の乏(とぼ)しさに情けなくなった。そして二人の結婚に強い運命を感じたのだった。 当然、モモンガの生態がわからない私。いきなり飛んだり、舐めたりしてくるのだろうか。（きっとケージに入っているから大丈夫でしょう）と自分に言い聞かせ、パーティーが始まった。 だが、しばしの歓談後、奥様の「お昼寝が終わりましたぁ」という声と共に、ついにモモンガが現れたのだ。ケージは……持っていない！　（一体どこに!?）。目を見開いて、よく見ると……（いたー!!）。奥様の手のひらに乗っているではないか。そう、やはり放し飼いだったのだ！ 席に戻るや否や早速、例の流れがスタート。「抱っこしてみてくださーい」と、毛布で包んだモモンガを私の膝に置いてきた。意外と大人しく、目がクリクリしていて、なかなか可愛い。おっかなびっくりではあるけれど、こんなチャンス滅多にないので、直に触ってみたくなった。「毛布を取っちゃダメですか？」と聞くと、奥様は笑顔で、「急にウンチやオシッコをしちゃうから」。 ◆モモンガvs.神田愛花 （えぇ!?）。本革のズボンにそんなものが付いたら最後。一生取れないシミになる！　（毛布は絶対に剥がさないぞ!!）。毛布越しに両手で挟んで持った。だがふとした隙にスススス……と外に出てきてしまった。（やばい!!）と思った瞬間、床にヒョイッと降り立ち……にゅ～。なんと、いきなりウンチをしたのだ！　（うわー!!　ギリギリセーーフ!!）と、心の中で叫んだ。 しばらくすると奥様が、私が持参した高級イチゴを出してくださった。「おぉ！」と皆から声が上がる。正直なところ、私自身が好きで持ってきた。だが流石に最初に手を出すわけにはいかない。（早く誰か食べ始めてー♪ラッとイチゴを見て掴み、口に含ませたと思ったら、モグモグしながらジーッと私を見てきた。（高級イチゴ……最初に食べたのはモモンガ！）。純粋無垢に見えるその瞳の奥で、羨(うらや)んでいる私の心を見透かしているようだった。 いいよ、別にいいんだけれど……人間に例えると、彼女は私と同じくらいの年齢だそうだ。同じ年月を生きてきた女同士じゃないか。もし言葉が通じるのなら、「こっちも可愛がるパフォーマンスを見せたんだから、あなたも多少はサービス精神を出して、一回ぐらいブワーッと飛んでみせてよね」と言いたくなった。 リーダーの奥様とモモンガちゃん。二人ともこれまでのアル中の女子メンバーにはいなかったタイプだ。ＮＥＷアル中ガールの誕生に、（これまたクセが強いメンバーが加入したなぁ）と、嬉しい反面、心がざわついた一日だった。 かんだ・あいか／1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』（フジテレビ系）にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年5月31日号より イラスト・文：神田愛花