松雪泰子、“洗練された女性像”は唯一無二の持ち味に 「人間を学ぶ」俳優業への価値観
『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)で夏役を演じる松雪泰子を見ていると、ティファニーの展示会「エキシビジョン『ティファニー ワンダー』技と創造の187年」オープニングパーティーに出席した際に披露していた、洗練されたブラックドレスコーデ姿が思い出される。作中で、スタイリッシュに着こなすスーツ姿もどんどん板につき、夏は本作のファッショナブルな世界観にすっかり溶け込んでいる。 【写真】場面カット(複数あり) 前社長・謙一(神保悟志)を殺害した真犯人が秘書・坂東(黒羽麻璃央)であることが明らかになり、九条開発の建て直しを図るために新社長に抜擢された夏(松雪泰子)の凛々しい姿が観られた『マル秘の密子さん』第7話。 そもそも夏は謙一の専属介護士として働いていたが、そのきっかけは彼女が半年前にたまたま居合わせた火事の現場から謙一を助け出したことだった。しかし、夏の脳内にはどうやらその火事で亡くなった密子(福原遥)の姉・鞠子(泉里香)が助けを求める様子がよぎる。密子が探し回っている姉の死の真相に夏も関わっているのだろうか。 密子が出会ったばかりの頃の夏は、お人好しの性格が災いし不運続きで損ばかりしていて自分のことは二の次だった。幸か不幸か、この火事現場での謙一との出会いが彼女の人生を大きく変えていく。謙一が遺言書で九条開発の全ての株を夏に譲り受けると言い残したおかげで、次期社長争いに巻き込まれ自身の本音と向き合うことになる。最初は自分の意志がなく、全てに対して諦めが滲み、眼鏡の奥で困ったように所在なさげに笑って誤魔化す自信のなさそうな表情とへの字に下がった眉毛が印象的だった夏が、密子の“トータルコーディネート”を受け、外見と共に内面を大きく変化させていく。 そんな松雪は、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)では主人公の生き別れた母親で世界的に有名なファッションデザイナー役を好演。夢を掴むために娘を捨てるしかなかったという役どころだった。『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)でも人材派遣会社の経営者役を担っていた。主演を務め日本アカデミー賞優秀主演女優賞など数々の賞に輝いた映画『フラガール』では、挫折を味わった元売れっ子ダンサー役を熱演した。強くて孤高のデキる女性役というのも松雪がこれまで演じてきたキャラクターの多くに共通する部分だ。 一方で、密子と出会う前の夏は、映画『容疑者Xの献身』での弁当屋で働くシングルマザー役と似通っている部分が見られ、夏と同じく何かとルーズな情けない元夫に寄生されお金を無心される役どころだった。また松雪の主演作『Mother』(日本テレビ系)での奈緒同様に、本作の夏は幸の薄さが滲み出ながらも一本気で骨太なところも似ている。 かと思いきや、意外にも朝ドラ初出演となった『半分、青い。』(NHK総合)では、ヒロイン・鈴愛(永野芽郁)のチャーミングで温かい母親役を大胆に演じた。儚げなところがありつつも懐かしさや温かみが漂うのも松雪ならではの魅力だと言える。 そのキャラクターが持つ多面性を表現できるのは松雪の俳優業に対する向き合い方にもありそうだ。かつてインタビューにて「私にとって仕事をしている時は、人間を学ぶ時間と言いますか、演じながら『生きる』ということを学んでいるような感覚が強くて。なぜこのキャラクターはこういう人格になったんだろうとか、この心理状況下でなぜこんな行動を取るんだろうとか、人についてあれこれ考えるのがとても楽しいんです」と語っていた。(※) 愛憎うごめき様々な思惑が飛び交う九条家で夏は膿を出し切り、自分の夢と密子の悲願を叶えられるだろうか。夏の夢と密子の願いが相反するものではなく共存できるものだと信じたい。 参考 ※ https://woman-type.jp/wt/feature/5702/
佳香(かこ)