【解説】“反乱”ワグネル・プリゴジン氏とは? 消息不明…“粛清の歴史”もこれまでのケースと異なる?
■反プーチン“粛清の歴史” 専門家「私利私欲のための反逆」これまでとは性質異なる?
そのプリゴジン氏が消息不明ということで、気になるのが「反プーチン“粛清”の歴史」です。ロシアではこれまで、特にプーチン政権を批判する人たちが次々と謎の死を遂げたり、命の危機に陥ったりしているのです。 2006年10月には、プーチン政権に批判的なことで有名だったジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤさんが、自宅アパートのエレベーターの中で射殺された状態で見つかりました。 同じ年の11月には、ロシア情報機関の元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏が亡命先のイギリスで、何者かに放射性物質「ポロニウム」で毒殺されています。リトビネンコ氏は、ポリトコフスカヤさん射殺事件に関わった人物のリストを入手していたともされています。 2015年2月にはプーチン政権を批判していた野党指導者のネムツォフ氏がモスクワ中心部を歩いていたところ、近づいてきた車の中から撃たれて亡くなったということです。 3年前の2020年8月には、プーチン政権を批判していた野党指導者ナワリヌイ氏が移動中の飛行機内で突然、意識不明となりました。 ナワリヌイ氏の関係者によると、本人が宿泊したホテルにあった飲料水のペットボトルから猛毒の神経剤「ノビチョク」が見つかったということです。一時、集中治療を受けたナワリヌイ氏は命に別条はなく、退院後には「事件の背後にはプーチン大統領がいる」と主張しました。 プリゴジン氏も同じような運命をたどるのでしょうか。
こうした事例を見ると“粛清”について想像をしてしまうかもしれませんが、東野教授によると、これらの事例と今回とでは「全く性質が違う」といいます。これまでの事例の多くは、プーチン体制の真実を暴こうという反体制派に向け、体制側が仕掛けたのではないかとみられてきました。 ただ、少なくともプリゴジン氏は「反体制派ではない」ですし、今回はプリゴジン氏の行動についても「私利私欲のための反逆」だと東野教授は指摘しています。 確かにこれまで表向きは、プリゴジン氏は“ワグネルがあげた戦果が正当に評価されていないから”と、軍や国防当局の幹部を名指しで批判してきました。ジャーナリストや野党の指導者とはだいぶ立ち位置が異なるので、過去の事例とは分けて考えるべきだということです。 東野教授はプリゴジン氏がその後に大きな発信をしていない理由について、「それもプーチン大統領との合意事項に入っている可能性もある」とみています。 「なんとなく、ことを収めたように見え、直ちにプーチン政権の権力基盤には影響はないと思う」としつつも、今回の出来事が「近年のプーチン体制にこれほどのダメージを与えた人物はいなかった」とも話していました。 ◇ 見えない部分の多いロシアですが、この案件でもまだ断片的な情報が多いです。肝心のウクライナをめぐる戦況にどのような影響を与えるかも、今後の焦点となります。 (2023年6月26日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)