【野球21Uワールドカップ】侍は無念の2位、データで大会を振り返る
阪神指名の横山、西武入りした台湾のエースが好投
投手の成績をまとめたものが表3だ。10月のドラフトで指名された横山雄哉(新日鉄住金鹿島→阪神1位)が評価に違わぬ活躍をみせた。横山は球威あるストレートで対戦打者を圧倒、初戦のオーストラリア戦では9人から8つの三振を奪う快投で勝利を呼び込んだ。決勝では乱調の森の後を受けて2番手で登板し、自身のエラーもあり2失点。ランナーを置いての投球には課題を残したが、少なくともストレートの威力はプロでも十分通用するものだった。中継ぎであれば1年目から活躍が見込めそうだ。西武入団が決まっている郭俊麟は9日の韓国戦、決勝の日本戦と重要な試合に先発、韓国戦でも1失点と好投したが、決勝ではそれを上回る快投をみせた。とくに切れのあるチェンジアップの威力は十分で1年目から貴重な戦力となりそうだ。すでに1軍実績も十分の上沢直之は格の違いを見せつけた。ベネズエラ、韓国の2戦に登板し1失点、12回で21奪三振を奪って2勝を挙げた。とくに韓国戦では味方の援護が1点にとどまる中での好投、決勝進出に大きく貢献し、このチームのエースであることを証明する内容だった。
大会全体としては課題も
地元台湾の優勝で幕を閉じた今大会だが、「ワールドカップ」という冠を背負った大会としては多くの課題が感じられるものだった。最も大きな問題は試合のクオリティーだろう。アメリカ、キューバといった強豪国が不参加だったこともあって参加チームのレベルは低調といわざるを得ないものだった。とくに1次リーグでは大味な試合が続き、25試合中10点差以上が8試合、両チームが4点以下に終わる投手戦はわずか3試合だった。大会を通じても押し出しや、タイムリーエラー、ワイルドピッチなどのミスが多くみられ、1試合平均の四球数は11.4、暴投数は2.0、エラーは2.7(表4)。
これらのミスによる得点は全得点の18.9%にも及び(表5)、決勝で日本が許した決勝点も押し出しによるものだった。大会全体の数字を日本のプロ野球と比較すると、ミスの数は1試合につき2倍以上の数字である。ワールドカップと名乗る以上、参加国のレベルアップと試合内容の充実は急務ではないだろうか。また興行面でもさびしい数字が並んだ。(表6)
地元の台湾の試合ではある程度の観客を動員したものの、そのほかの試合ではスタジアムは閑散としていた。比較的野球熱の高い台湾でこの状態とあっては今後の開催地選びにも影響がありそうだ。次回の開催予定は2016年のメキシコ。参加国のレベルアップと、興行面でのテコ入れは必須といえそうだ。 (株)日刊編集センター