「娘に許されると思い込んでいた」モラハラ・DVの加害者は変わることができるのか? 負の連鎖に苦しむ親子の物語【書評】
モラハラやDVによって心に受ける傷の深さは、計り知れない。被害者の心には長くトラウマが残り、被害者が後に加害者に変容するなど、ハラスメントの連鎖が発生することも多い。『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(龍たまこ:漫画、中川瑛:原作/KADOKAWA)は、モラハラ加害者の父親とそれに悩む被害者・娘の物語だ。加害者・被害者双方の視点から、モラハラ・DVの苦しみや負の連鎖がリアルに描かれている。 【漫画】本編を読む
大手商社で管理職を務める鳥羽晴喜は、温和な人柄から同僚・部下に「仏」と慕われている。だが以前の彼は、モラハラ・DVが原因で離婚・娘からは「毒親」と言われ絶縁状態になるほどのハラスメント気質だった。過去を振り返り自身を変えた結果、今は仕事仲間や友人との穏やかな時間を過ごしている。そんなある日、鳥羽は娘・奈月の結婚式の知らせを受け、今の自分ならば許してもらえるのではと期待する。 穏やかな生活を送る父に反して、奈月はモラハラ・DVのフラッシュバックに苦しみ、父親を強く恨み続ける毎日だ。婚約者や職場の後輩にモラハラ気質を受け継いだ言動を繰り返す様子は、まさに負の連鎖が描かれており、胸が痛くなる。父親と娘はそれぞれに心の傷と向き合い、自身の幸せを模索していく。加害者は変わることができるのか? 被害者から加害者への「許し」は必要なのか? もがきながらも、それぞれが辿り着いた幸せの形をぜひ確かめてほしい。 また本作では、鳥羽以外にも多数のハラスメント加害者・被害者が登場する。鳥羽を含む男3人のルームシェアメンバーは、全員が妻に離婚されたモラハラ・DV加害者だ。鳥羽の会社の同期や、残業が多い奈月の会社のことなど、職場に蔓延するパワハラも描かれる。現代社会でも、家庭や職場などいたるところにハラスメントは存在する。自身が与えた傷や受けた傷とどう向き合い、負の連鎖を防いでいくのか。本作は加害者・被害者両方の心のケアとして、読んでほしい1冊だ。 文=ネゴト / fumi