グレースーツに導かれた20年。トム・ブラウンにインタビュー
表現の軌跡を一冊に集約 哲学が詰まった限定アイテムも
自分自身であり続けること。簡単なようで難しいこのテーマに、トムは20年をかけて取り組んできた。その姿勢をもっとも雄弁に語るのは、彼が作り上げてきたコレクションだ。周年に際し、それらを取りまとめたブランドブックを発表。制作には、トムのパートナーでもあるMET服飾研究所キュレーターのアンドリュー・ボルトンが参加した。 「アンドリューの目を通して自分の作品を振り返るという貴重な経験ができました。ショーケースのように、アイコニックなルックを閉じ込めた一冊です」
デビューから一貫する哲学は、発売中のカプセルコレクションからもうかがい知れる。「2003」の数字があしらわれたアイテムには、〈トム ブラウン〉の定番ディテールもふんだんに盛り込まれ、アイデンティティが色濃く漂う。
取材の最後に、「今後の公私における展望は?」と聞いてみた。トムは少し考えてから口を開く。 「仕事では、妥協せずに、このままブランドを大きく育てていければと考えています。プライベートでは…なんでしょう(笑)。でも、アンドリューと愛犬のヘクターと一緒に人生を、日々を送っていくのだと思います」 粛として現実を見据え、自分と向き合う。そんなトムのまなざしに宿るのは、なすべきことをなすという覚悟と確信だ。これから先の20年も進化しながら続いていく〈トム ブラウン〉の姿が、彼には見えているのだろう。 -------------------- トム・ブラウン >> ペンシルヴァニア州出身。LAの俳優協会に同姓同名の登録があったため、綴りに「h」を足して「Thom」とした。自慢の日用品は、シャンパン用に何脚もそろえるクープグラス。 -------------------- Photo_Kisshomaru Shimamura Text_Motoko Kuroki
GINZA