チェコを代表するチェリスト、ミハル・カニュカを迎える充実の2公演
チェコを代表するチェリストとして、日本にも多くのファンを持つミハル・カニュカ。現在はプラハの春国際音楽祭芸術委員と同コンクール会長も務めるカニュカは、2019年以来、ソリストとしての活動と並行して同国の名門ターリヒ・カルテットの一員でもある。11月、このターリヒQが来日を果たすことから、東京文化会館小ホールにおいて2つのプロジェクトが実現する。日本発祥ながらドイツに本拠を置くロータス・カルテットとターリヒQのジョイントによる「メンデルスゾーン・プロジェクト」(11月10日(日))、そしてカニュカが伊藤恵、漆原朝子という日本を代表する演奏家と共演する「ミハル・カニュカ ピアノトリオ・プロジェクト」(11月18日(月))である。 「メンデルスゾーン・プロジェクト」で演奏される3曲は、いずれも作曲者の際立った天才性を示す作品である。第2番、第6番は、実質メンデルスゾーンの最初と最後の弦楽四重奏曲であり、ベートーヴェンの衣鉢を継ごうとした彼の高度な技術とロマン性が横溢する。さらに最大の聴きものとなりそうなのがロータスQを迎えての弦楽八重奏曲。弦楽四重奏曲第2番と同様10代の作品ながら、ある種の風格さえ湛えた傑作である。近年は弦楽合奏版での演奏が増えているだけに、ヨーロッパで高い評価を得た2団体による演奏は貴重かも知れない。またロータスQとカニュカはかねてより厚い親交を結んでおり、その交流はそれぞれに高い音楽的成果をもたらしている。カニュカを迎えたターリヒQが活動を活発化させたことにより、両団体の関係にも新しい可能性が開かれたと言ってよいだろう。 そして「ミハル・カニュカ ピアノトリオ・プロジェクト」ではまずその顔合わせに期待が募る。伊藤恵、漆原朝子は当代の名手のみならず、現在、東京芸術大学ほかで多くの後進の育成に当たる存在。正統的な中に豊かな感情表現を湛えた音楽の魅力は、ともに多くの音楽ファンの支持を集めるところだ。カニュカのチェロとともにベートーヴェン『大公』においては馥郁とした古典美の香気が、そしてチャイコフスキーの大曲『偉大な芸術家の思い出に』では、変化に富んだ劇的な展開が存分に堪能できるだろう。弦の国、チェコと日本を結ぶ、この秋、充実の2公演である。 取材・文/逢坂聖也(音楽ライター) <公演情報> ターリヒ・カルテット 創立60周年記念日本公演 メンデルスゾーン・プロジェクト ▼11月10日(日) 14:00 東京文化会館 小ホール S席-6500円 A席-4500円 学生-3000円(当日座席指定、要学生証) [曲]メンデルスゾーン(弦楽四重奏曲 第2番 イ短調、他) [問]KCMチケットサービス■0570-00-8255 ミハル・カニュカ ピアノトリオ・プロジェクト ▼11月18日(月) 19:00 東京文化会館 小ホール S席-6000円 A席-4000円 学生-2500円(当日座席指定、要学生証) [出演]伊藤恵(p)/漆原朝子(vl)/ミハル・カニュカ(vc) [曲]ベートーヴェン(ピアノ三重奏曲 第7番 変ロ長調)/他 [問]KCMチケットサービス■0570-00-8255