桑木志帆が涙の初V「去年の忘れ物」昨年PO敗れ2位 熱心指導の父に「やっと優勝」で恩返し
<国内女子ゴルフツアー:資生堂レディース>◇30日◇神奈川・戸塚CC西C(6697ヤード、パー72)◇賞金総額1億2000万円(優勝2160万円)◇曇り、27・6度、南西の風7・3メートル◇観衆7752人 【写真】優勝インタビューで目を潤ませる桑木 涙の初優勝。プロ4年目の桑木志帆(21=大和ハウス工業)が、逃し続けていた初優勝を手にした。首位と1打差の2位から出て、4バーディー、1ボギーの69と3つ伸ばし、通算11アンダー、205。首位から出て同じ最終組だった堀琴音を逆転した。昨年大会はプレーオフの末、1学年下の桜井心那に敗れて2位。悔し涙を1年後、うれし涙に変えた。二人三脚で歩んできた父正利さん(66)に最高の恩返しを果たした。 ◇ ◇ ◇ ウイニングパットを決めると、桑木は両手を突き上げ、歓声に笑顔を振りまいた。ただ、堀のボギーパットを待つ間にこみ上げてきた。後半はマッチレース。最後まで激しく争った堀と抱き合い「おめでとう」と祝福されると涙があふれ、両手で顔を覆った。優勝スピーチは「去年の忘れ物を取ることができて本当によかった」と話し、胸を張った。1年越しの“大河ドラマ”は最高の結末だった。 2番でバーディーパットが、カップを1回転してこぼれた。それでも「マイナス思考になっていた去年の自分と比べながら回っていた。メンタル面も技術面も成長した」と冷静だった。すると5番で9メートルのパットを決めバーディー先行。8番をボギーも、9番で13メートルのパットを決めて取り返した。1差の首位堀が同じホールをボギーとし逆転。その後は首位を守り続けた。 昨年大会も18番を1打差の首位で迎えていたが追いつかれ、プレーオフで敗れた。今年は「18番で引き離す!」と、最後まで攻めの姿勢。それが12番では木に当たり「ダボを覚悟した」が、フェアウエーに出てバーディーと、3打分もの価値ある幸運を呼び込んだ。 4歳でゴルフを始めて以来、父正利さんの熱心な指導は「厳しくてゴルフが嫌になった」こともあった。だが昨夏、脳梗塞に倒れて1週間入院。恩返しの思いは強まっていた。父は「よくやったと言いたい」、桑木は「一番の味方。やっと優勝を見せられた」と、ともに笑った。「広い海に帆を広げ、志を持って飛び出せ」。名前の由来通りに、桑木には無限の可能性が広がっている。【高田文太】 ◆桑木志帆(くわき・しほ)2003年(平15)1月29日、岡山市生まれ。4歳でゴルフを始める。プロテストはコロナ禍で順延された21年6月に合格。昨年の資生堂レディースで初めて最終日を首位で臨むもプレーオフで敗れ2位。昨季はトップ10入り10度で、うち2位は3度。現在は倉敷芸術科学大在籍。趣味はカラオケ。163センチ。 ○…首位で出た堀は2年ぶりの通算3勝目を逃した。3バーディー、3ボギーの72で通算9アンダー。2番で8メートルのパーパットを決め、6番パー4では第2打を70センチにつけてバーディーと、随所でファンを魅了した。だが連続ボギーとした9番で陥落。18番のボギーで2打差で敗れた。「すごい悔しいけど去年を考えたら優勝争いなんて、とんでもない。楽しみながらできた」。今季初のトップ10入りに昨季からの不振脱出への手応えを感じていた。