全国男子駅伝、最多出場19度の名物男 大会初の通算100人抜きも達成 岡本直己さん(鳥取・広島県、中国電力)
天皇杯全国都道府県対抗男子駅伝競走大会(全国男子駅伝、ひろしま男子駅伝=日本陸連主催、中国新聞社、NHK共催)が19日、広島市中区の平和記念公園前を発着するコースで開かれる。30回目を迎える大会。古里や多くの人の期待を背負い、安芸路を彩ってきたランナーやスタッフの思いに迫る。 全国男子駅伝(ひろしま男子駅伝)2025 チーム紹介 もし第5回(2000年)の2区3キロを走っていなかったら、「ミスター安芸路」は誕生しなかった。鳥取・東伯中の3年生は、トラックの3000メートルの自己ベストを上回る8分50秒をマーク。「部活に入らないといけないから何となくやっていて、このときは(陸上を)やめるかどうかくらいの感じだった。ここではっきり決められた」。大会最多出場(19度)への第一歩となった。 「成長させてもらった大会で、毎年呼ばれたいと思っていた」という男子駅伝。印象深いのは第5回のほかに2度ある。鳥取・由良育英(現鳥取中央育英)高2年時に初めて高校区間に挑んで1区6位だった第7回(02年)。それと中国電力入社1年目に3区2位だった第13回(08年)だ。「3回とも陸上でやっていけるかもしれないと自信を得た大会だった」と話す。 忘れられないのは広島のアンカーを務めて区間賞を獲得した第14回(09年)。北京五輪に出場した松宮隆行に1秒差で勝った。うれしさに加え、今となってはほろ苦さも。「広島の一般で区間賞を取ったのは国近友昭さん、尾方剛さん、油谷繁さんと五輪ランナーしかいなかった。その勢いに乗っかれればと思っていたけど、最後まで五輪には届きませんでした」 第24回(19年)には大会初の通算100人抜きを達成し、特別賞の「いだてん賞」を受賞。NHK大河ドラマ「いだてん」で主演を務めた中村勘九郎さんのサインは大事に飾っている。記録は現在134人。ただ、「個人としては名誉だけど、チームとしては不名誉な記録だと思うので」と喜びは控えめだ。 第13~20回(15年)は広島で走り、第21回(16年)からは再び鳥取から出場するようになった。一般選手として、中高生がいかに普段通りに走れるかにも心を配り、ベテランの利点をフル活用。「有名人と知り合いだったりするんで、『今ならサインもらえるぞ』って言ったりしていた」と笑みを浮かべる。 大会は学びの場でもある。自身は第5回の前日練習で当時国内トップレベルだった永田宏一郎のストライドの広さに心を奪われた。「何をするにしても本物を見るのが一番大切。中高生は五輪に出るような選手が間近で見られるこの大会を機に成長してほしい。でも、もうそういう大会になっていると思います」。第30回の代表入りを逃した安芸路の名物男は、大会の良き伝統が継承されることを願っている。 ◇ おかもと・なおき 鳥取県東伯町(現琴浦町)出身。2007年に明大から中国電力に入社。ひろしま男子駅伝では09年の区間賞をはじめ、区間1桁順位を9度記録した。来年1月末での退部が決まっている。
中国新聞社