「光る君へ」まひろ、道長、定子…華やかな衣装にみる“平安時代の装束”をプロが解説
源 倫子役/黒木 華さん
役どころ:藤原道長の嫡妻。左大臣家の姫で、宇多天皇のひ孫。おおらかさと強さを併せ持つ女性。道長の出世の道を支え、ともに歩む。紫式部(まひろ)とも交流があり、不思議な関係が築かれていきます。
藤原定子役/高畑充希さん
役どころ:藤原道隆の長女。一家の繫栄を願う父の思いを一身に負い、年下の一条天皇に入内します。清少納言らが集うサロンを作り上げ、一条天皇の最愛の妃となりますが、悲運に見舞われます。
【衣装】 吉田羊さん、黒木華さん、高畑充希さん、石野真子さん、凰稀かなめさんが着ているのは、いずれも公家女性の平常着です。帯は締めず、袴の上に単や袿を重ねて羽織るだけの簡単な装いです。いちばん上に着ている袿はどれも、地紋を織り出した織物の上に、二重に文様を織り出した二陪(ふたえ)織物をイメージしたものと推測されます。二陪織物は豪華な錦織物で、特に高貴な女性が用いたものです。実際には生地や色、文様、また目上の人の前では裳(も)をつけるなどにより身分を表していた時代ですので、複数の女性が集う場面では、その装いは身分によってさまざまに異なっていたと思われます。 <写真>右から黒木華さん、石野真子さん(源倫子の母・藤原穆(むつ)子役)、凰稀かなめさん(歌人・赤染衛門(あかぞめえもん)役)。 はちじょう・ただもと●綺陽装束研究所主宰。有職故実の知識を広め、現代人の生活に活用するための活動を続けている。早稲田大学ほか大学・高校・図書館・神社庁等での講演多数。おもな著書は『有職装束大全』(平凡社 2018年)、『詳解 有職装束の世界』(KADOKAWA 2020年)、『有職故実から学ぶ年中行事百科』(淡交社 2022年)など。 〈参考文献〉 『平安時代史事典』古代学協会・古代学研究所編(角川書店 1994年) 『日本服飾史 女性編』井筒雅風(光村推古書院 2015年) 『日本服飾史 男性編』井筒雅風(光村推古書院 2015年) 『有職装束大全』八條忠基(平凡社 2018年) 『詳解 有職装束の世界』八條忠基(KADOKAWA 2020年) 『日本の装束 解剖図鑑』八條忠基(エクスナレッジ 2021 年) 『写真で見る 紫式部の有職装束図鑑』仙石宗久(創元社 2023年) 『光る君へ 前編(NHK大河ドラマ・ガイド)』(NHK出版 2023年) 監修=八條忠基 画像提供=NHK 編集=秋月和美