<〝史上最弱〟からの挑戦・’21センバツ明豊>’21センバツ明豊/上 成長 どん底から狙う日本一 /大分
第93回選抜高校野球大会に挑む明豊。3年連続出場は県勢初の快挙で、強豪ひしめく今大会の出場校32校でも唯一の存在だ。しかし、現チームは甲子園常連校とはかけ離れた“どん底”から一歩を踏み出した。選手たちの流した汗と、諦めない情熱が、3年連続の春切符のリレーを実現させた。【辻本知大】 「俺が監督になってから、史上最弱のチームだ」。前チームがセンバツ交流試合を勝利で終えて解散した翌日。川崎絢平監督(39)は、最初のミーティングに勢ぞろいした選手の前で活を入れた。 「先輩に比べて力が劣っている自覚はあった。改めて気が引き締まった」(竹下聖人内野手)「甲子園を諦めたくない。最弱から最強になって見返す」(京本真投手)。選手たちは厳しい現実の前に奮い立った。 褒めて育てる。最近の少年スポーツでは、それが指導者の鉄則。ネガティブな言葉は避け、長所を伸ばすのが時代のトレンドだ。だが、新チームは注目投手や強打者がいた前チームに比べ、技術や体力が不足していた。それ以上に、スポーツ選手としての「負けん気」が足りなかった。 川崎監督は真逆の方針で選手たちに向き合った。屈辱感で心が折れていては、とても頂点など目指せないと思ったからだ。 川崎監督には引退した前チームの3年生の「置き土産」への思いがあった。 新型コロナウイルスに振り回された2020年。甲子園優勝に向けて一丸となったチームは、春夏の甲子園はともに中止で夢を絶たれた。だが、選手たちは甲子園がなくても、自分たちの高校野球は終わりではないとひたむきに練習を続けた。 そして、8月にセンバツ交流試合が開かれるという吉報が届くと、投打の持ち味を生かし、県岐阜商(岐阜)を4―2で降した。 「1年間の集大成のような勝利だった。ベンチやスタンドで見ていた下級生も『自分たちも甲子園で試合がしたい』と強く思ったに違いない」。その確信が、川崎監督が厳しい言葉をぶつけられた理由だった。 幸修也主将(2年)は「あの言葉はめちゃくちゃ覚えている。まさか最弱って言われるなんて。でも、やったろうと決意しました」と振り返る。選手たちは目の色を変えた。「絶対に見返す」という一心で奮起した。 9~10月の県予選は大量得点を重ねて優勝。地区大会の本戦では、九国大付(福岡)、神村学園(鹿児島)を相手に2試合連続の逆転勝ちを決めて、準決勝に進出。気持ちの弱さを克服し、明豊らしい勝負強さを身につけて、センバツの切符をたぐり寄せた。 センバツ出場が決定した1月29日。川崎監督は選手たちを集めた。「努力して頑張ってきた成果だ。自信を持っていい」。成長した姿をねぎらった。 「最弱とまで言われたから、これだけ成長した。やってきたことは間違っていなかった」。幸主将は自信を深めている。