ブルーカーボン競売、地球延命の鍵? 中国浙江省
【東方新報】人間が吐き出す炭素を大量に吸収してくれる海洋生物が温暖化を遅らせ、地球の延命につながるではないかと期待されている。中国・浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)の象山県(Xiangshan)で今年2月、国内で初となる海洋生物由来の炭素排出権競売「ブルーカーボン・オークション」が実施された。 ブルーカーボンとは、2009年に国連環境計画(UNEP)が命名した新たな炭素の吸着源のこと。植物の光合成による「グリーンカーボン」に比べて、吸着する炭素量が多く、期間も長い。 日本でもブルーカーボンについて水産庁が調査を続けているほか、横浜市や福岡県などで活用に向けた取り組みが始まっている。 象山で競売にかけられたブルーカーボンは、象山の「三宝」と呼ばれる昆布、のり、青のりだった。 象山で海藻養殖会社を経営する朱文栄氏(Zhu Wenrong)は、「象山の海藻は中国国内でも最高級で、ここの村は200年以上も海藻を収穫してきた歴史がある」と紹介する。朱氏の会社では住民約560人を雇用し、年間約4000万元(約8億2575万円)の利益を上げているという。 今後は海藻類の販売に加えて、海藻を育てる段階でもブルーカーボン取引から収入を得られる見通しだ。朱氏は、博士課程で海洋の生態学を学んでいる時にブルーカーボンを知り、象山で起業した経歴の持ち主だ。 朱氏は「私たちが養殖している青のり1キロの苗が1000キロに成長する。その成長プロセスで海水と大気中の窒素やリン、炭素を吸収し、窒素・炭素固定の役割を果たすことが分かっている。この役割を競売にかけることができた」と解説する。 中国は2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウトし、2060年にカーボンニュートラルを実現する「双炭(ダブルカーボン)」の目標を掲げている。海洋資源の豊富な中国にとって、ブルーカーボンは温暖化対策の切り札になるのではないかと期待されている。 ブルーカーボンでにわかに注目された象山には、秦の始皇帝のために「不老不死」の丹薬を探した徐福が2年間滞在したという伝説が残されている。この地域は、徐福が不老の丹薬をつくるために掘ったと伝わる井戸「丹井」や石屋、徐福が象山に滞在したことを伝える唐代の石碑も再建され、同じように徐福伝説が残る日本や韓国などからも観光客が訪れる。 今後は徐福だけでなく、ブルーカーボン取引も象山の資源になるに違いない。もっとも、ブルーカーボンについては未知の要素が多く、取引も始まったばかりだ。地球の「不老不死」につながるかどうかも未知数だ。 秦の始皇帝が追い求めた不老不死の丹薬は見つからなかったが、ブルーカーボンは海洋にあふれており、多くの研究機関や国際機関がその効果を認めている。温暖化問題は待ったなしだ。何とか地球の延命に役立ってほしいものである。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。