「給料デジタル払い」導入企業たった4% 「希望者がいない」「リスクが心配」「手続きが複雑」...それでもキャッシュレス化進めるには?
制度が始まり2か月足らず、まだまだこれからという段階
J‐CASTニュースBiz編集部は、帝国データバンク情報統括部の調査担当者の話を聞いた。 ――調査結果では、「導入に前向き」が約4%、「導入予定はない」が約9割。ズバリこの結果をどうとらえていますか。 調査担当者 中小企業の多くはまだ導入予定がない結果となっています。ただし、それは否定的というより、まだまだ制度に対する理解の進展や情報の少なさ、リスクに対する不安からくるものとみています。 また、前向きな企業ですが、約4%という数字はやや少なく感じましたが、実質的に制度がスタートしてまだ2か月足らず。そこを踏まえると、まだまだこれからという段階ですので、今後の経過に着目したいと思います。 ――「給料デジタル払い」について、企業側/労働者側からみたメリットをどう考えていますか。 調査担当者 企業側からみたメリットは、まず振込手数料の削減があげられます。資金移動業者の口座への送金手数料は銀行口座への振込手数料に比べて、安く設定されることが多いためです。 また、給与のデジタル払いを希望する従業員の満足度の向上に加えて、日払いや週払い、前払いなども行いやすく、事務手続きの削減が図れるといったメリットもあります。 労働者側からみたメリットは、デジタル払いを日常的に活用している従業員にとって、支給された給与の電子マネーへのチャージの手間が省けて、利便性が高いという点があげられます。また、銀行口座と併用することでライフスタイルに応じた金銭管理ができる点もメリットと言えます。
今のところ、従業員の満足度向上というメリットが弱い
――デメリットとしては何が考えられますか。 調査担当者 企業側からみたデメリットは、デジタル払いと口座振込の二重運用や、労使協定の改定などによる業務負担の増加や人事給与システムの改修などの費用の増加があげられます。 労働者側からみたデメリットは、現時点で「PayPay」しか選択肢がないため、好みの資金移動業者を選定できない点があります。また、デジタル払い利用頻度の増加による詐欺や不正出金被害リスクも増大します。さらに、業者の破綻によるサービスの中断・停止も心配です。それに、地方などでは活用できる店舗が十分でないこともあげられます。 ――そうしたメリットとデメリットを考えると、これほど「導入に前向き」な企業が少ないのは、企業にとってメリットよりもデメリットのほうが大きいということでしょうか。 調査担当者 調査結果の企業のコメントをみると、特に従業員の満足度の向上というメリットが弱いと言えます。企業からは、「デジタル払いを利用する従業員が少ない」や「地域でデジタル払いができる店舗が限られる」「社内アンケートを実施したが、希望する者はいなかった」などの意見があがりました。 他方、企業にとって大きな負担になるデメリットは、開始時にかかる「業務負担の増加」と言えます。「振り込み処理が複雑になる」や「手続きに手間がかかりそう」などの声が聞かれました。また、「システム障害などのリスクがある」との声もあり、「サービスが中断・停止に陥る」といった新たなリスクの存在も導入を妨げる大きな要因と考えられます。