「AI技術の進歩に驚く時期はすでに終わった」OpenAI長崎社長が描く日本の未来
慎重かつ大胆に前進するOpenAIのアプローチ
さらに、AIによる問題解決の高速化にも言及する。「人間が5秒で解決していた問題を瞬時に解決し、その積み重ねは5分になり5時間になる。さらには、人間が5日間かけて解いていた問題を、AIは数秒で解決できるようになるでしょう」と長崎社長は予測する。この時間の短縮は単なる作業効率の向上ではなく、人間の思考や創造性をより高度な領域に解放する可能性を秘めている。 行政サービスの革新も重要な領域だ。「ハローワークのようなサービスでAIを活用することで、複雑なマッチングを効率化できる」と長崎社長は具体例を挙げる。全国的に極めて多くのアクセスがあり、雇用主からの要望も多岐にわたるハローワークのサービスは、AIの活用が大きな効果を発揮する可能性がある。さらに、2025年に稼働予定の自治体標準システムとの連携も視野に入れており、行政のデジタル化に大きなブレークスルーをもたらす可能性がある。 教育分野でも、AIの活用に大きな期待を寄せる。「ChatGPTを使った事前学習とディベートを組み合わせることで、より深い思考力を養成できる」と長崎社長は提案する。具体的には、授業前にChatGPTで事前調査を行い、授業ではその知識を基にディベートを行うという方法だ。これは、AIと共存する未来社会に適応した人材育成の新しいモデルとなりうる。 高齢化社会への対応も重要なテーマだ。長崎社長は「アドバンスドボイスモード」のような音声対話AI技術に言及し、「高齢者や過疎地域の住民にとって使いやすいインターフェースを提供し、デジタルデバイドの解消に貢献する可能性がある」と述べた。この技術により、テキスト入力を必要とせず、自然な会話を通じてAIと対話できるようになる。 ■OpenAIのアプローチ:慎重かつ大胆な前進 しかし、これらの変革は一朝一夕には実現しない。長崎社長は「AIは技術の進化が速いので、常に最新の旗艦モデルを勧めているが、進化が今までのどのテクノロジーよりも早いだけに、対話を重ねて理解を深めながら進めていきたい」 この慎重さは、日本社会の特性を考慮したものだ。急激な変化よりも段階的な導入を行い、導入への懸念を取り除くことで、その後の爆発的な応用へとつながる。「みなさんの『腹落ち感』を醸成することが重要(長崎氏)」という言葉に、AWSを日本市場で普及させた経験が凝縮されている。