名匠マイケル・マンが描く「エンツォ・フェラーリ」の知られざる素顔…映画『フェラーリ』が車好きに問う「クルマ」のレゾンデートルとは
映画『フェラーリ』はいよいよ2024年7月5日公開
エンツォ・フェラーリ。イタリアの自動車メーカー、フェラーリの創設者である彼は、数々の名車を産み出し、自らカーレースに参加しました。世界でフェラーリの冠はステータスとなっているといっても過言ではないでしょう。2024年7月5日公開の映画『フェラーリ』は、そのエンツォが1957年当時、窮地に陥っていた自社復活のために、伝説のレース「ミッレ・ミリア」での優勝を目指したエピソードを中心に描いた人間ドラマです。皇帝とも称された男が抱え続けた「クルマと人生」とは。 【閲覧注意】映画『フェラーリ』に登場する華麗なクルマとキャストたち。見たら劇場に行きたくなります(21枚)
名匠が手がけ、名優が演じたエンツォ・フェラーリ
映画『フェラーリ』は、エンツォが生きた半生を、彼の私生活、レースに賭けた姿を通して描かれた。監督を務めたのはアカデミー賞ノミネート作『インサイダー』をはじめ、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノが初共演で話題をさらった『ヒート』などを担当した名匠、マイケル・マンだ。 その撮影スタイルの特徴は「男の美学」を見せること。それは本作のエンツォの姿を通してもしっかりと見せてくれ、その演出に間違いはない。主演のエンツォ・フェラーリを演じたのは、『スター・ウォーズ』シリーズ「エピソード7~9」でカイロ・レン役を演じてブレイクしたアダム・ドライバー。カイロ・レン役の若々しい姿からは想像できない初老の姿で、映画の舞台の当時約60歳のエンツォの姿を蘇らせた。 映画の中心となる「ミッレ・ミリア」は、1927年から1957年の間、イタリアの公道1000マイル(約1600km)を使用して行われていた、国民的人気を博した自動車レースのこと。現在は世界各地で開催されるクラシック・カーレースとして、その冠が残されている。 本作ではその最後の開催年となった1957年、フェラーリ社の存続をレースに賭けた、時に「不遜で冷徹」とも評されたエンツォの姿と、私生活では家族と息子に愛情を注いだ生身の姿を描いていく。
エンツォ・フェラーリが心の支えとしていたのは家族だった
皇帝と呼ばれ、不遜とも冷徹とも称されたことのある彼は、弱冠18歳で父親も兄も亡くなり、フェラーリ家の存続を背負う立場になり、レースという常に死と直面するレーサーたちと、自社のクルマに責任を持たなければならなかった。言わば冷徹を演じ続けなければ、責任を果たすことが出来なかった。 そんな彼が心の支えとしていたのは家族だった。しかし、愛息アルフレード(愛称ディーノ=後に名車「ディーノ206/246GT」にその名が冠されたのは有名な話)が1956年に病死し、エンツォの心はその愛情の向かう先をひとつ失ってしまう。 仕事の場所では冷徹とも不遜とも称されたエンツォだが、家族に対してはとても愛情深かったのだろう。その姿が描かれるのが、映画の冒頭にまだ早朝、眠っている息子とその母親をエンジン音で起こさないように、当時の愛車プジョー「404ベルリーヌ」で家を出る場面だ。 404ベルリーヌはニュートラルにしておけば、大人ひとりでも押せるほどコンパクトな車種。エンツォは自宅の門の外まで、クルマを押し出し、自宅から離れてからエンジンをかけて走り出す。このシーンだけでも彼が決して「不遜で冷徹な男」だけであるはずがない、と観客は感じるのではないだろうか。
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