【解説】高松市議会の「議員の発言時間見直し」…その理由と議員たちの反応は?
KSB瀬戸内海放送
高松市議会の「議員の発言時間見直し」についてお伝えします。6月定例議会から代表質問などの「持ち時間」の目安が変更となり、多くの会派や議員にとっては発言時間が短くなりました。見直しの理由と、議員たちの反応を取材しました。 「議員の発言時間見直し」について詳しく見る>>>>>>
5月9日、高松市議会の共産党議員団と無所属の議員、合わせて4人が「発言時間見直しは議会の力を自ら弱める行為」だとして議長らに撤回を申し入れました。 (申し入れを行った/太田安由美 議員 [無所属]) 「議会の責任感を狭めているというか議会の仕事を狭めている。自ら。そこがちょっと私としてはどうなのかという思いは非常にある」 見直しは2024年2月の議会運営委員会で当時最大会派だった自民党議員会が提案し、4月に決まったものです。 3人以上の会派が行う代表質問はこれまで一律50分の持ち時間でしたが、会派の人数に応じて時間を配分することになり、19人が所属する最大会派の「自民党清新会」は60分と10分増えましたが、ほかの3会派は短くなり、全体で35分短縮しました。 さらに主に少数会派や無所属議員が議案についてただす「質疑」と議案の採決前に賛成・反対の意見を述べる「討論」は、これまで30分が目安だったのが15分に制限されました。 背景にあるのは、2023年4月の市議選で定数40のうち新人16人が当選して一般質問する議員が増え、「議会事務局の負担が増した」ことでした。 選挙前の2022年の6月議会では14人が一般質問を行い、質問と答弁をあわせた時間は約8時間半でした。これが、選挙後の2023年6月議会では25人が一般質問を行い、合計10時間40分ほどになり、終了時刻も遅くなりました。 そこで、2024年の6月議会以降、これまで3日間だった一般質問の日程を4日間に増やすことに。職員の負担を減らすため、あわせて提案されたのが一般質問以外の「発言時間の見直し」でした。 6月18日と19日に行われた代表質問。公明党議員会は35分の制限時間の全てを、自民党議員会は30分中28分を使いました。 (公明党議員会/春田敬司 議員) 「3割減っていますので大きな項目で言えば3題くらい削らないとできなかった。ただ議会全体の運営の効率化の観点からすれば制約が一定(必要)であることは十分理解している」 唯一、発言時間が長くなった自民党清新会は60分中54分間を使いました。 (自民党清新会/山下誠 議員) 「会派の19人全ての議員の意向を一緒にして代表質問する。そこに専念した。19人の意見を全て集約するとこのくらいの量になるのかなと。結果としてそういう時間配分になっていた」 また、共産党議員団と無所属の議員あわせて4人が議案の質疑を行いました。中には時間をオーバーする議員も……。 (高松市議会/大見昌弘 議長) 「質疑時間を相当超過しているので以後の発言は簡潔にお願いいたします」 無所属の茂木議員は、事前に用意した質問を制限時間15分以内に収めたものの、市長らの答弁に対する再質問の時間が十分に確保できませんでした。 (無所属/茂木邦夫 議員) 「できるだけ簡潔にポイントを絞ったつもりでも、議案の審査に必要な質問はたくさん出てくる。再質問することは記者会見でも普通にあると思う。これができなくなってしまう。時間に関してはもう少し寛容にしてほしい」 「見直した発言時間を実際に運用しながら適宜見直す」としていた議会運営委員会のメンバーは……。 (自民党議員会/佐藤好邦 議員) 「簡潔に分かりやすく聞けるからポイントを絞っての(質問)良かったと思う。先般の議運で決まったこの時間で私は十分だと思っていますので、私は議運のメンバーですけどそういう話でまいろうと思います」 県議会や近隣の市議会を見てみると、会派の人数によって代表質問の時間に差を設けているのは香川県議会と岡山市議会、徳島市議会。一方、岡山県議会と松山市議会、高知市議会は人数にかかわらず時間が一律。倉敷市議会は時間制限がありません。 議員の質問時間はどうあるべきなのか、専門家に聞きました。 三重県議会事務局の職員を経て、地方自治を研究している髙沖秀宣さんは、高松市議会に限らず多くの議会で議員の質問が長く、答弁も含めて用意した文章を読み上げるだけになっている現状を批判します。 (自治体議会研究所/髙沖秀宣 代表) 「議員は絶えず反省すべき。ズバリ問題点、そこに踏み込めばいい話。前段で長くしゃべる方がいるが、問題点を簡潔に捉えてそして議論する場だというふうに転換していく必要がある」 また、「質問内容の重複」も改善の余地がありそうです。 今回の代表質問では、例えば、自民党清新会と市民フォーラム21の質問項目に「2023年度の一般会計決算の見込みと今後の行財政運営」という同じものがありました。質問が同じなので当然、大西市長による答弁も同じ内容になります。 髙沖さんは、議長が質問項目を事前に確認し、同じ切り口であれば内容を変えるよう調整する必要があると指摘します。 (自治体議会研究所/髙沖秀宣 代表) 「質問時間は限られているので、いま事業はどうなっているかという現状を問うだけの質問ではなくて、できるだけ政策提言を行っていく方向で質問時間を充実させることが大事だと思う」 「行政の監視」と「政策の立案、提言」という議会の大切な機能を果たすため、単に時間が長い短いではなく、「密度の濃い」質問と答弁にしていく必要があるのではないでしょうか。 少数会派と無所属の議員4人は「議会運営員会は少数派の声が反映されていない」として、7月1日の6月議会最終日に「議会改革特別委員会」の設置を議員提案する方針です。
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