吉高由里子、紫式部が「大切なものを探す物語」を見届けたい〈光る君へ〉
平安神宮で撮影開始「平安時代にタイムスリップ」
平安神宮でのクランクインから6カ月と少し。吉高は、筆を持ち、美しい装束を身に着けて、平安時代にタイムスリップ。もちろんそこには、いろいろな驚きもある。雨漏りがする家、今まで見たことも触れたこともなかった小道具や御簾などに囲まれての撮影を通して平安時代を追体験してきた。 「家に窓がない、ドアもない、壁もない(笑)。隙間風だらけで、すごく寒そうだなって。ただ冬は寒かっただろうけど、夏は涼しかったのかなとか、そんな想像をしたりしています。御簾1 枚のプライバシーの環境とか不思議だなと思いますね」 暮らし方や生き方にも驚きが満載だ。 「乙丸(従者)がずっと一緒にいるんですけど、どこに行くのでもずっとついてきます。姫だからそうなるんですけど、姫は姫で大変だなって。好き勝手に行きたいところへ行けるわけじゃないというよく分からないルールのある時代だなって。でも、お金がない人たちは自由だったりして、どっちがいいんだろうと想像しました」 その一方で、現代と変わらないこともある。 「同じだなと思ったのは、人を好きになっていくこととか、浮いたり沈んだりする感情の起伏。心とか頭の中の考える回路は同じ人間だなと感じながら演じています」 撮影を重ねていくなかで格闘しているのが文字を書くシーンだそう。 「これからどんどんそういうシーンが増えていくんだと思うんですけれど、やっぱり文字を書くのが……左利きなので筆のシーンになると緊張するんです。書き始めて最初からサラサラ書けるわけじゃなくて手が震えたりするので、撮影する前に30分ぐらい時間をいただいてから本番に入ったりしています。文字が主役のドラマでもあるので、そこはすごく丁寧に練習して撮影に臨んでいます」
柄本佑は「最初から戦友のような感じ」
ドラマには歴史上の有名人が続々登場する。人物相関図を見るだけで複雑さにやられるが、そのなかでも紫式部にとって最も重要な人物が藤原道長だ。紫式部はまだまひろ、道長は三郎だったころ、2人はひょんなことから出会い、まひろは興味を引かれていく。道長は柄本佑が演じている。 吉高いわく、柄本には「最初から戦友のような感じがある」と言う。ドラマ『知らなくていいコト』で共演。このドラマの脚本は『光る君へ』で脚本を担当する大石静が手掛けた。 「(柄本は)居てくれたら安心するというか、頼もしいというか。関係性がある程度築けている時にこの役でまた巡り合えて良かったって思います」と、吉高。 「一日中泣いてたりとか、ワンカットが 6 ページぐらいあったところでは、ここは劇場だ! スズナリ(下北沢にある小劇場)で2人でやってる気持ちでやろう、頑張ろう!と言いながら(笑)。すごくシリアスなシーンやラブシーンの前もすごくフラットに会話してくれて、リラックスさせてもらえるような空気感を作っていただいています」 藤原家に生まれ兄たちの影でのんびりと暮らしていた道長だが、さまざまな事態が重なって政治の中心へ。そして、平安の貴族社会で最高の権力者となっていく。この時代では自らが生まれた家柄により人生が左右される側面もあった。 「生まれてきた家で可能性が限られてしまう時代。女性も男性もすごく苦しいですよね。男の人、政治権力の階段を上がっていきたい人たちは何とも歯がゆい思いをした時代だったんだろうなと感じます。政治的な駆け引きがとても大変だったんだろうなと。裏切ったり裏切られたり、のし上がったり、切り捨てたり……いっぱいあったんだろうなと思うと男はつらいよですよね」 昇り詰めていく道長、そして紫式部(まひろ)の関係にはもどかしさもある。 「あなたはこの国を変えて!という気持ちと、何もかも捨てて自分といてほしいという気持ちとで揺らいでる感じなんですよね。揺らぐからセリフも増えちゃうので、はっきりしてくれよとは思うんですけど(笑)、それが人間ドラマなんですよね」