ベッコウトンボの繁殖を確認 秋穂コミュニティセンター前の池 県内で3か所目 観察会で環境保全訴え【山口】
山口市秋穂東の秋穂コミュニティセンター前の池で、同地域では十数年ぶりに絶滅危惧種のベッコウトンボの繁殖が確認された。阿知須の新光産業きらら浜自然観察公園と鋳銭司の調整池に続く県内3カ所目の繁殖地。4月28日には、発見者で昆虫愛好家の野田司さん(52)=下関市=による観察会があり、地域住民に希少なトンボの存在と環境保全の重要性を周知した。 同公園のレンジャーや愛好家でつくる県ベッコウトンボ調査グループの一員の野田さんが県内を調査する中で、このため池で昨年、多くの個体を発見。4月5日に羽化が確認され、個体が繁殖しており、再定着したものと判断した。 距離にして5、6㌔は移動するため、2019年に同公園で最大の523匹を記録した個体群が飛来して定着したと考えられている。農業用のため池で、農薬が混ざっていない水質の良さとヨシなど植生の良好さ、近くに寝床となる休耕田があるなど生息の好条件がそろっていたことが要因という。 ベッコウトンボは、環境省のレッドリストで、絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧IA類」に指定されている。羽根に三つの大きな斑紋を持つのが特徴で、体長は約4㌢。1970年代までは広く観察されていたが、環境の悪化により生息地が激減。現在は5県だけで生息を確認。県内では2000年には20カ所で見られたが、次々と姿を消し、14年には同公園が唯一の繁殖地となっていた。その後、鋳銭司でも見つかった。
この日は77匹が確認され、池の至る所で飛び交う姿が見られた。野田さんが地域住民に生態や特徴を説明。「多くの個体が見つかった翌年には姿を消すことがあるため、地域の方にはヨシの間引きなど環境の維持をお願いしたい。この池から近くの池に小さくても生息地が点在していけば、個体の維持につながっていく」と訴えた。 池の管理者の田中茂穂さん(74)と近くに住む広海俊次さん(75)は「珍しいトンボがいることを初めて知って驚いた。気を付けて池を見ていきたい」と話していた。同公園でベッコウトンボを知り、参加した田中大理君(小郡中1年)は、カメラで撮影に熱中した。「民家が近くにあるような池で貴重なトンボがいることが分かり、びっくりした。黒くて羽に斑紋があるのが格好いい」と笑顔を見せた。 次回は11日午前9時半から観察会を開く。